技の開発と人間
人間と遭遇した次の日。
今までしばらく狩りをしてきてレベルも随分と上がったが、電撃幼竜になったときのレベルを大幅に超えても進化しなかった。
必要なレベルがまだまだ足りていないのか、『声』の言っていた《条件》が満たせていないのか。
ただ、進化するとはまだ先になりそうだと思った俺はレベル上げと並行して新たな目標を立てることにした。
まず一つは新しい安全な場所、もとい寝床の確保。
幼竜から電撃幼竜への進化のとき体が大きくなった。
もしも次進化する場合、幼竜じゃなくなるかはわからないが体が大きくなることは間違いないだろう。
ラノベとかでもだいたいドラゴンは巨大だしな。
そうなると今の寝床では窮屈に、最悪入らなくなる場合がある。
それに今の俺ならだいたいの魔物には勝てるだろうし活動範囲を広げて、欲を言えばもっと森の奥に。それもあまり魔物の寄り付かない場所が好ましい。
そんな場所あるのかはわからないが。
次に戦闘能力の向上だ。
出会ったことのある限りでは苦戦するようなことは今までなかった。
だがそれも今後活動範囲を広げる予定だし、俺より強いやつに会う可能性もある。
ならば勝つために、最低でも逃げれるように強くなればいいじゃない。というわけである。
本格的な寝床の捜査は今までよりある程度力をつけてから挑むつもりだ。
行ったことのない未知の場所に行くわけだからな。ながいて、なにがあるのかわからない。
なので今日、明日は戦闘能力の向上に努めようと思う。
今日は考えていたことや、狩りをしながら思いついたこと。それらを実際にやっていく……技の開発だ。今までは狩り優先だったからな。
明日は今日やったことを踏まえての実践練習にしようと思う。
大まかな方針はこんな感じだな。
+++++++++++
寝床にしている洞穴からすこし離れたできるだけ広いスペースを取れる場所にきた。
すでに頭のなかでイメージは固まっているものがいくつかある。もちろんカッコいいやつもあるぞ!
雷のように電気を上から下に……ミニ雷だな。
これはあっさりできた。地球で雷の落ちるところを見たことがあるからイメージしやすかった。
これは……〈落雷撃〉と名付けよう!
次は俺の周りに〈電撃剣〉大量に作る。
今までも複数だしたことはあったが、さらに数を大きくして。イメージしやすいように新たな技として名前をつけるつもりだ。
周りに100本ほどの〈電撃剣〉を作ることができた。
魔力的にもまだまだ余裕はあり、魔力の許す限り数を増やすことができる。必要に応じて数を決めよう。
これを……〈電剣百華〉と名付けよう!
〈電撃玉〉verも作った。〈電玉連弾〉だ!
え?さっきから名前がダサくて厨二くさいって?
ほっとけ!!カッコいいやい!!!男はいつまで経ってもすこしの厨二心をもっている……!
気を取り直して次は電気を飛ばす……他の魔法とは違い、例えば【斬撃】などを利用した…なんて表現すればいいんだろ?……飛ぶ斬撃の電気ver?
他の攻撃を予備動作として利用する、例えば爪による攻撃の延長線上と思うことでよりイメージしやすく戦闘中に魔法をイメージするための余計な思考を省くことができる。
近距離戦では遠距離みたいにイメージする時間はないだろうしな。できるだけ発動までの時間は短縮できたほうがいい。
まずは爪に〈纏い・電気〉(めんどくさいので今度は『纏い』とするが)を使って電気を纏う。
その爪で切り裂き、それによって電撃が飛ぶイメージ!!
ズバッ!!
できた。
5本の電気の斬撃が飛んでいって気を切り裂いた。
案外簡単にできるものだな。
《【電爪】を習得しました》
ん?これは魔法じゃなくてスキルになるのか?
スキルと魔法の違いがよくわからんなぁ。
次で最後だ。みさなんおなじみ身体強化をやってみようと思う。
ただ、これを電撃魔法でやるとまた痛い思いをしそうだからただの魔力でする。
ただの魔力だと属性がついた魔法を扱うより簡単にできる。魔力という体を一部を操る感じだな。
問題は『体を強化する』というのをどうやってイメージするか……だったがいろいろと考えた結果、筋肉や骨、体のあらゆる部位の動きを魔力で助け、覆うなどして強化してしまおうという考えで落ち着いた。
電動自転車で例えると、自転車が体でバッテリーが魔力だな。
イメージの方向性は固まったが、これを形にするのにはしばらくかかった。
いろいろと試行錯誤することしばらく……
ついに完成した!!
《【身体強化】を習得しました》
ふむ、これもスキルなのか。
軽く効果を試してみたが、30メートルほど飛び上がれ、木を殴るとあまりの威力に後ろの木が次々と吹っ飛び5メートル道ができた。爪による斬撃は横に薙ぐと半径4メートルほどの木が倒れた。
す、すげぇ……。
あるとなしじゃ大違いだな。
しかも体のなかでおこなわれる強化だからか魔力の消費が本当に誤差ほどしかない。
これは本当に便利な技を作ってしまった……!
まぁ、この世界の人間もイメージは違うかとも使ってきそうだが。
よし。したい技は作ることができた。
まだ日の落ちるまですこし時間があるから狩りでもするか。
ん?あれは人間?
50メートルほど離れた場所に2人組の人間が。
ドラゴンだからか人間だったときと比べてよく目がみえる。赤い髪の男と黒い髪の女だな。
ん?なんだ?男がすごい勢いで走ってくるぞ?
女もそれを追いかけてっ感じか?
距離が10メートルほどに近づいたとき男は背中の大剣を抜き、さらに速度を上げて突っ込んできた。
「死ね!トカゲ!!」
「グラァァア!?!?(なぜに!?)」
なんで俺は知らない男に「死ね」なぞ言われなければならんのか!
……あ、俺ドラゴンじゃん。魔物じゃん。
この世界じゃドラゴンって人間の敵な感じ?
「グガァァァァァア!!?(うそだろぉ!!)」
「ごちゃごちゃうるせぇよ!さっさと死んだけ!!」
クソッ!戦わなくちゃ、ダメか……?
……やってやんよぉ!!俺の華やかなドラゴン生のためだぁ!俺のカッチョいい魔法どもの餌食になれぇい!
こうしてこの世界に生まれて。
ドラゴンとして初めての人間との戦いが幕を開けた!!
(よし。こう〆ればば主人公っぽい!)
そんなアホみたいなことを考えながら。
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