大学生

 私は早く、オトナになりたい。

 そしたら彼の隣に堂々と並べるから。


「おーい、心夜みや! 早く来いよ」

「あ、うん朝斗あさと

 私が朝斗と呼んだ彼は、幼馴染であり彼氏である。そして今日は久しぶりに一緒に遊べることになっていた。それも私が好きな水族館で。

「待たせてごめん!」

「昔からなんだから今更謝んないでくれよ。それに、待ってる時間も嫌いじゃないし」

 時々さらっと胸きゅん台詞せりふを言ったりもしてくる。おかげで心臓は大忙しなんだけど……。

 不安なことが一つだけある。

 朝斗は大学生なのに、私はまだ高校生だということ。大学の様子なんてわかるわけもなく、綺麗なお姉さんもたくさんいると思う。こんな私が、高校生で子供っぽい私が隣にいていいのか、と思わない日はない。

「──でさ、って心夜? 聞いてるか?」

「ご、ごめん。ちょっとね」

「なんかあったのか? もっと別のところが良かったとか……」

「いや、全然そんなじゃないよ! ただ、少し不安だなって」

 いっその事知ってもらおうと、さっき考えていたことを全て話した。朝斗の大学でのことや、私ではやっぱり釣り合わないんじゃないか。不安なこと全部。だけど彼は、そんなものを簡単に壊してしまうらしい。


「はあ、心夜。俺さ──」

 返ってきたのは情熱的な目と、


「お前のこと死んでも離す気ないんだけど、それでも信じられない?」


 そんな甘い言葉だった。

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