第15話 犯人を暴く!それしかないっしょ!
かりんと響と合流した魅夜は一刻も早くジルファードへ向かうべく先を急いでいた。
「じゃあホントに!?」
「あぁ、シルフィーナは生きている」
「やっぱり七瀬君じゃなかったんだ♪」
全ての話を聞いた2人は腹立たしい気持ちよりも魅夜が犯人で無かったことによる安堵の方がずっと大きかった。
「それにしてもなんでそんな事……」
「さぁな……シルフィーナが死ぬ事で…死ななくても存在が消える事で得をする人物なんて思いつかないけど、事実シルフィーナは地下牢に捕らえられてた。国に関わる人物が黒幕だとは思うんだがな」
「だけどそんな人いるの??」
「ゲームなんかじゃだいたい大臣あたりが糸を引いてるんだけどな」
「ゲームと一緒にしないで」
「それにしても……」
魅夜は2人をじっと見た。
「な…なに?」
「あーイヤラシイ目ぇ!」
「ちがッそうじゃねぇ!」
「じゃ、なによー!」
(双剣士のかりんに、アサシンの姫川響、とことん魔法系のファンタジー要素ないなぁ……)
魅夜はすこし肩を落とした。
「なんでそんなガッカリなのー??ウチら来ない方が良かった???」
「そうじゃないよ、来てくれたのは単純に嬉しい。ただ魔法使いが誰もいないなーと」
「何か問題??」
「俺がファンタジー出来ない」
「……………」
「………………………」
「ついてきたの間違いだったかも」
「そうかもね」
と2人は少し後悔した。
2人は勇者パーティにいたおかげなのか、戦いに関してかなり腕がたった。
かりんの職業、【双剣士】は攻撃力は低いもののアジリティが高く、小回りが効く上技やスキルが多い。
このスキルに関しても魅夜はようやく概要を知ることが出来た。
【スキル】とは魔法や技といった特殊能力の総称。
大きく分けると職業ごとに得られる【固有スキル】と、アクセサリーや武器、防具などで装備している間一時的に得られる【装備スキル】があり、さらに一部の魔法や技などは書物や鍛錬などによって得られる事があるらしい。
さらに細かくいくとそれぞれに常に発動し続ける【パッシブスキル】と術者の任意で発動出来る【アクティブスキル】があるということだった。
響の職業、【アサシン】もアジリティが高い。その戦い方は忍者のように影に隠れ暗器を用いて戦う暗殺術が基本だが、本人としては影に隠れるなど性格的に苦手なようで、響は堂々と真っ向からぶつかって行く。アサシンと呼ぶよりただの人間凶器のようだった。
本人曰く、「影でこそこそなんて性にあわないよ、向かってくるならぶつかってかなきゃ!」と言っていた。
職業には上級職も存在するようで、熟練度を上げれば転職可能であり、より強力なスキルを得ることが出来る。
魅夜の職業は【武闘家】の部類に入るのだろうが、鑑定してもらってないので正確にはまだ分かっていない。
「それでどうするの??」
「もちろん、ジルファードへ急ごう」
「その後は??」
「どうにか戦争を回避してシルフィーナが生きてることも証明できればいんだけどなー…」
「前途多難ね……」
「シルフィーナが生きてるなら目の前に連れてけばいんじゃない??」
「ただ連れてっても偽物だって言われるだけだよ。それに根本的な解決をしてないからまた狙われるかもしれない」
「そうね、ちょっとやそっとでどうにかなる案件じゃないかも」
「よし、今考えてもしょうがない。とにかく先を急ごう!」
魅夜達はミオ達と合流するべく、急ぎジルファードへ向かった。
ジルファードへついた魅夜達は急ぎ城へ向かった。
城の前では門番が待ち構えていて、とても入れてくれそうな雰囲気ではなかったが、ダメ元で話しかけてみる。
「なんだお前ら?」
「グラムナレムから来ました。ジルファード王に直接伝えたいことがあるから通して欲しい」
「王は貴様らのようなやつに会うことはせん。帰れ」
「大事な話があるんだ!国の一大事なんだぞ!」
「嘘を言うな!帰れ帰れッ」
門番は全く耳をかさず門前払い。魅夜は一刻を争う事態が差し迫ってきていることをどうにか伝えたいものの、話をまとめたり上手に伝えたりすることが苦手な魅夜はやきもきするばかりだった。
すると、後ろで見ていた響が門番の前に出た。
「あのね?門番さん。ウチら勇者一行なワケ。協力してくれないのから魔王が攻めてきた時守ってあげないからね??」
「勇者様!?しかし聞いていたのと随分……」
「お忍び中なの!それくらい重要なはなしがあるんだから!」
かりんも後ろから援護射撃をしてくれた。
「……わかりました!勇者様の謁見となれば王も会ってくださるでしょう」
そう言うと門番は中に入れてくれ、便宜をはかってくれた。
王の間に入るとそこには見慣れた顔が。
「魅夜ーーーッ!!」
魅夜の顔を見るや飛びついてきたのはミオだった。
ずいぶん心配していたようで目が腫れている。
「なんだよー大丈夫たって言ったろ?」
「うん……うん……グスッ」
少しの間があり魅夜は声を掛けられた。
「そちが勇者なのか??」
「恐れながら王様。この者は魅夜と申すもの。私の命の恩人なのですが勇者ではありません」
そう発言したのはシルフィーナ。無事たどり着けたようだ。
「シルフィーナ!良かった無事だったか」
「はい。ほんとうにありがとうございました。このご恩は決して忘れません」
「気にするなよ、俺がやりたいからやったことだ。それより……」
魅夜はシルフィーナの元へ歩いていくと両手をシルフィーナの頬に差し出す。
「魅夜なななな何をッ!?」
むにー
「ひゃ…ひゃひふふんへふはー!?」
魅夜はシルフィーナの両頬を摘むと横にくいっとひっぱった。
「魅夜ーなにしてんのーッ!?」
おもわずミオがツッコむ。
「こんな時くらい気ぃ張るのはやめろ。本来のお前はそうじゃないんじゃないのか?知らんけど」
魅夜は手をはずし、かぶりを振った。
「しかし私は……」
「王女だから…か?」
「はい」
「ずっと思ってたんだ。なんか違和感あんなーって。ムリしてんじゃないのか?」
「そんな事は……」
「ま、別にいいけど。すまん話が逸れたな」
魅夜は改めてジルファード王の方へ向き直った。
「話は聞いた。グラムナレムが我が国に戦争を仕掛けようということ、シルフィーナ王女が殺されたと言うデマの事などな」
「シルフィーナが襲われた時、現場にはジルファード国の物が落ちてた」
「身に覚えがない事じゃ。ワシらはグラムナレムを襲う理由も、シルフィーナ王女を襲う理由もない」
「だと思う。だからこうしてシルフィーナの保護を求めたんだ」
「じゃが何故じゃ?そちらにとってはワシらが味方である保証はないはず。シルフィーナ王女の保護を求めるにはちとリスクがあると思うが?」
「1つはシルフィーナが道中襲われた事。もしシルフィーナを襲いグラムナレムと戦争を起こす気ならシルフィーナが城に来た時点で拘束、殺害は出来たはず。でもそれをしていない事」
「あー確かにそうね」
「2つ目はシルフィーナがグラムナレムで捕らえられた事。どう考えても身内が犯人なのは明確」
「そりゃそうか」
ミオも響も納得したようだ。
「こっからが本題。じゃあ何故そういう事態になったのか、それにどう対応するのか」
「どうするのですか??」
みなの視線が魅夜に集まる。
「…………分からん」
「な…なによそれぇーッ」
「俺はアタマ良くないからな。考えれるのはここまで!」
「ジルファード王と話していました。解決策は2つ」
「話し合いを申し込み誤解を解く。それとも……迎え撃つか」
「どっちも上手くいくとは思えないな」
「そうですね、難しいのは承知です」
一同が黙り、しばし沈黙が流れた。
「じゃあもうアレしかないね!」
響が何か思いついたように声をあげた。
「なにかいい考えが??」
「犯人を暴く!それしかないっしょ!」
そう言うと響はニコっと笑った。
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