第7話 あらあら懐かれちゃいましたね♪

 「で、お前はなんなんだ??」

 「………ドラゴン……」

 「そうだな、さっきはドラゴンいて怖かったなー?で、どこの子なんだ??」

 「………ドラゴン……」

 「そうだなードラゴンどこいったんだろーなー?で、こんな所で何してるんだ??」

 「………分からない……」

 「迷子ですかね??」


 あたりを見回すが、親らしき人影は見当たらない。この子を呼ぶような声も聞こえなかった。


 「……ありがとう」


 少女は感謝の言葉を口にした。


 「良いって、すぐに親も見つかるだろう。どっから来たかわかるか??」


 少女は周りを見渡した。そして「んっ」と言って指さした。


 「山の方角からかー。あそこはドラゴンがいるらしいから気をつけろよ??」

 「………テオドラーナ」

 「テオドラーナ??君の名前かな??そうそう、君だよ気をつけるのは」

 「……違う……テオドラーナ」

 「ん??なんですかね??」


 イマイチ話が噛み合っていないようで、2人は目を見合せた。


 「……ドラゴン……はテオドラーナ」


 2人は今までの状況と話を繋ぎ合わせ、1つの結論に達した。


 「いやまさかね」

 「そうですよ、まさかですよ」


 2人は少女に目を向けた。


 「ちょっと聞くけどさっきのドラゴン、知ってる??」

 「……知ってる」

 「ひょっとして本人?」

 「……ドラゴン、テオドラーナ。テオドラーナがさっきのドラゴン」

 「「えええぇぇぇ!?」」






 「…テオドラーナは、ドラゴンの王である父さまの子。エンシェントドラゴンの末裔。本名は、テオドラーナ・AK・プリメリオ」

 「エンシェントドラゴン!?」


 ミオが驚きの声をあげる。


 「エンシェントドラゴンって??この世界でもドラゴン系最上位種??」

 「最上位も最上位!!この世界の創世記より存在し、その力は神のごとくと言われた最強種ですよ!!」

 「…今はエンシェントドラゴンはいない。血が薄れた限りなくエンシェントドラゴンに近いドラゴン。それが父様や、私」

「でもドラゴン上位種だろ??それだけですげーや!」

 「その中でも私たちのようなものを竜人族っていう」


 ドラゴンは通常お馴染みのモンスターの姿であるが、知性を持つランクの高いドラゴンは喋ることや、人型の形態である【竜人族】と呼ばれるものが存在するとのこと。

 

 「でもなんであんな事に??この剣が刺さってたぞ?」


 剣は禍々しいオーラを漂わせながら不気味に光っている。


 「……私、山で空を流れる紅い星眺めてた。そしたら突然出てきたローブの男にこの剣で刺された。そしたら何か邪悪な力が中に入ってきて、気がついたら今ここにいる」


 少女は自分の刺されたであろう胸を見ながら言った。


 「テオドラーナはドラゴン形態になれるんだよな??そんな子供の頃から首が9つもあるようなすげードラゴンってんだから驚きだよなー。まだ中学生くらいなのに」

 「……中学生??」

 「12歳くらいってことだ」

 「……テオドラーナ、102歳」

 「……え??」


 魅夜は知らなかった。ドラゴンは人間とは寿命や年齢等の基準が違うことを。

 ドラゴンは長寿であり、100歳超えてもまだ子供。しかし、人間で言うと中学生くらいにあたるのであながち間違いでもなかった。


 「そうだ!ドラゴンにまた変身してくれよ!!やっぱ男としてはドラゴンは憧れだよなー」


 と魅夜はニンマリした。


 「……良いよ。テオドラーナへーんしーん」


 と妙なテンションで棒変身ヒーローのようなセリフをはいた。しかし、静寂だけがその場を支配する。

 「…テオドラーナ、なんか変。持ってた力出せなくなった」

 「えー!?せっかく頭が9つもあるスーパードラゴンなのにー!?」


 と魅夜は心底ガックリきていた。


 「…テオドラーナ、頭そんなにない。一つだけ」

 「え!?さっきのドラゴン形態では9つありましたよ??」


 とミオがやっと口を開いた。


 「…テオドラーナ、分からない。もともと一つだけの頭なの」

 「この剣と何か関係があるのかな?」


 とミオは魅夜の持っている剣を見た。



 話しているうちに村にたどり着き、長様に報告をした。テオドラーナは迷子という事にし、村を苦しめていたドラゴンだった事は内緒にする事にした。

 もし村の人間たちが知って報復しようと考えたら、力をなくしたテオドラーナに成すすべはないだろう。

 当然そんな事になったら魅夜も黙ってはあないだろうが、面倒ごとは起こさないにこしたことはない。


 「明日になったら山に送り届けてやるからなテオドラーナ、んーテオドラーナって少し名前長いな、テオで良いか??」

 「……テオ……」


 テオは両サイドのポニーテールをピコピコさせて、


 「…テオ嬉しい。テオ、魅夜と一緒にいる」


 と、袖口をきゅっと掴んだ。


 「あらあら懐かれちゃいましたね♪」


 ミオが茶化すように言う。


 「テオ?お前の父様もきっと心配してるぞ??」

 「…大丈夫。父様は理解あるから。いつも私の自由にさせてくれてる」

 「そう入ってもだな……」

 「……嫌なら父様に言いつけて、焼いてもらう」


 テオは表情ひとつ変えずに言った。


 「………勘弁してくれ」


 こうしてテオは魅夜について行くことになった。

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