第4話 やってみなくちゃ分かりません!

 七瀬が広場を後にし歩いていると、1人の女の子が走りよってきた。さっき大男から助けた女の子だった。


 「待ってって言ったのに!!なんで置いてくの!?」

 「………なんか面倒な事に巻き込まれそうだったから」

 「うっ」


 女の子はわかり易く動揺を見せた。


 「俺は帰るまで穏やかに過ごしたいんだけど」

 「そんな事言わないでぇ♪ね?話聞くだけでもぉ♪」


 女の子は豊満なおっぱいをたゆんたゆんさせながら上目遣いに見てきた。


 「……聞くだけな」


 おっぱいに目を奪われながらそう決めると、近くにあるカフェ(?)に入った。


 「で?何の話な訳?」


 七瀬はわかり易く不機嫌になってみせた。


 「まぁまぁまずは自己紹介♪私の名前はミオスタシア・ウォータークレスです。皆からはミオとかシアとかって呼ばれてます」

 「それで?なんであんな男に捕まったの?」

 「それはですね!実は私勇者様を探しておりまして」

 「それで?」

 「なんでかって言うと、実は私の住んでいる村がとあるモンスターに苦しめられていまして」

 「退治してもらおうと?」

 「話が早いですね♪」

 「俺は勇者じゃないからね」

 「えー!あんなに強いのにですか!?」

 

 ミオは立ち上がりテーブルを両手で叩いた。


 「強くても勇者じゃないし、魔法どころか武器も装備できない」

 「そんなぁ…やっと見つけたと思ったのにぃ」


 ミオは座り込んで肩を落とした。


 「でも見当はつく」

 「え!?一体どこに!!」

 「正確には、そのうちやって来るってことしか知らないんだけど」

 「どーゆー事ですか?」


 七瀬はミオに一部始終を話した。


 「なるほど、そうだったのですか。じゃあ勇者様がやって来るまで待つしかないのですね」


 ミオは落胆して肩を落とした。


 「いつやってくるんですかねぇ?」

 「知らないよ、女神にでも聞いてくれ。さて、用はもうすんだよな?俺は行くから」


 そうして七瀬は席を立つ。


 「待ってください!!勇者様は貴方と同じ世界の人なんでしょ??だったらコネになってくださいよぉ♪」

 「言うと思った。知り合いだとは限らないし、向こうが受けるかどうかも分かんないんだぞ?」

 「それでも良いです!やってみなくちゃ分かりません!」




 一通り話し終えカフェを後にした。ミオはなかば強引についてくるようだった。


 「とりあえず、今夜の宿何とかしないとなぁ」


 アテもなく歩き出した七瀬は、助けた女の子の父親の言葉を思い出していた。


 (ギルドに所属なんてのは面倒くさそうだ。取り分も持ってかれるかもだし。生産は俺には無理だ、ノウハウなんか何も無い。)


 「何を考えてるの??」

 「金だよ金。この世界来たばかりで金が無いから宿に泊まることも出来ないんだ」

 「じゃあ野宿!?あたしそんなのいやぁ!」

 「…別についてこなくてもいんだぞ」

 「そ…それとこれとは話が別で♪」


 ミオは尚も七瀬についてくる気まんまんだったが、七瀬は気にもとめずスタスタと歩いていった。




 「これで合ってるかなぁ…取り敢えずその辺の魔物倒してそれっぽいの集めて見たが…」


 七瀬は最初に降り立った森を再び訪れた。ガルドが素材を欲しがっていたって事は、魔物の素材を商売に使えるって事じゃないかと推測したからだ。

 しかしどの素材がどれくらい売れるかなんて七瀬は知らなかったので、取り敢えず片っ端から殴り倒してみた。


 「ほぇーやっぱり強いんですねぇ♪」


 ミオは戦闘にはいっさい加わらず、終始ぽけーっと見ているだけだった。


 「これだけありゃあ何かしらそこそこ売れるだろ」

 「でもそれどーやってもってくの??」

 「…………」

 (考えてなかった………)

 「考えてなかったんでしょお!!」

 「…ちげーよッ!全部担いでもってく!!」


 七瀬は散らばっている素材をせっせと拾い集めその辺のツタで縛り上げると肩に担いで歩き出した。

 七瀬は歩きながら、


 (こんな生活いつまで続けるんだ……)


 と先の見えない異世界生活にただただ肩を落とした。

 

 

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