16部隊と鬼畜任務

目が醒める。


今の時刻は卯の刻の頭ほど。


俺は早速一階のリビングに入る。


「おはよう。意外と早いねぇ」


この図書館を兼ねた大きめの屋敷の主、ソウタが挨拶する。

そういや私服のソウタは見たことなかったな。


センスいいな。俺は服を見る目がないからわからんけど。


ソウタから冷蔵庫の中は好きに使っていいとの旨を聞いたので適当に朝食を済ませる。


別にベラベラと日常を書く必要はないので、身支度とか色々して城へ向かった。



城門到着。


その下にクレイが居た。


「来たね。準備は出来ている。さあこちらへ」


またクレイについていく。

「俺が着く隊は決まったのか?」


「ああ。君は16独立部隊。の隊長補佐をしてもらう。今から顔合わせをするつもりだ」


おー。結構重要だな。


「へぇ。独立部隊。やるじゃん俺」


そんな話をすしていたら扉の前に出た。

講堂と書かれている。


「着いたよ。」

クレイは大きめの扉を開けて叫ぶ。


「皆、行っていた通り新しい隊長補佐だ」

16独立大隊


転校生の紹介かっての。


「上野アカギです。どうぞよろしく」


1人、人影から飛び出てくる。


「は……初めまして、新入りさん。私は…….隊長の……えと、アカリです。よろしくお願いします……」


ピンク髪で鎧を着ている。装備は……片手剣か。


アカリの自己紹介が上手く行ってないことを察し、すかさずクレイがフォローする。


「いやー、この娘、実力は確かで隊長だけどなかなかの内気でねえ」


「うん。よろしく」


俺は周りには優しい方だから自然に返事が出て行った。


「さて、早速で悪いが、君たちに任務がある」

クレイの口調が急に変わる。


「内容は、この近くの森でのモンスターの掃討だ。アカギくん、試験で見せた実力、見せて貰うぞ」


「ああ。元よりそのつもりだせ!」



早速、任務を遂行しよう。


任務の内容はモンスターの掃討。


なんでも、今日いきなりボス級モンスターが現れたとのこと。


初任務だと言うのにハードル高い。何これ。


「現場に到着」

俺は内心面倒くさかった。


しかし、その懸念は最悪の展開になった。


あろうかとか、隊員全員が急に突っ込んでいった。


「さっすがバカ。特攻しか頭にない」


だいたいこうなるとは思っていたよ。


「感嘆しないで引き戻してください……あわわわ……もうダメージ受けてる人いる……」


「どうにかしないとな……。 『バインド』!」


俺の手から出た魔法の縄たちが無謀な隊員どもに絡まりつく。ドMなら大興奮の代物。


「すごい……」

アカリが感嘆の声を出した。


予め練習しておいて良かった。


こうして皆を縛ったまま強制的に作戦会議が始まった。

意外とバインドって疲れるな。

まあ人10人くらい持つから当たり前か。


「よし。全員引き戻したよ」


あーこれ結構辛い。


「はい。じゃあここに括り付けて下さい……」

アカリが言う。


近くにあった木の幹に縄を括り付けた。


これなら簡単にいなくなるまい。


益々威勢だけはいい奴だ。


こいつらを毎回こんな感じに押さえつけてやってるのか。

隊長さんの苦労は途轍もなさそうだ。ご苦労様としか言い様がない。


自分の運命を悔やんでいると、


「そうだ、すみませんがアカギさん、例のモンスターの偵察に行って貰えませんか?」


「分かりました。他に偵察出来るのいないし」


というわけで、斥候に行く羽目になった。


とりあえず、モンスターの強さと耐性とかでも調べてみるか。


相変わらずここらのモンスターは雑魚だな。本当にこんな所に強敵なんているのか?



道中はゴブリンの様なものしかいなかったので、スキルを使う必要すらなかった。


「えーと……これで何匹だっけ? まぁいいか。多すぎて数える気にもならん」


そんなこんなで雑魚を倒していると

「オリジナルスキル習得『龍殺しの舞』」


なにこれ。チート?


「試しに打ってみるか。『龍殺しの舞』!」


その瞬間、幾千を超えるナイフが辺りに舞い上がる。

その銀の精霊たちは無差別に周りの木々やゴブリン達に襲いかかる。


「やっべえ。味方巻き込んじゃうやつじゃん……余程のことが無い限り封印だな」


確かに大技だが、今の俺には扱い辛い。


また何匹か雑魚を屠ったが、やはりあのスキルは出来るだけ使わない方がいいかと思っていた。


何故なら、攻撃範囲が円状に広がるから味方に危害が及ぶかも知れないこと。


それにもう1つ。これはかなりの精神力がいる。

コストが高いので連発は出来ない。


「どうかして活躍出来ないものか?こんな凄いスキル、野放しにしておくのはもったいない」


そう考えていた矢先の出来事だった。


「‼︎」


更に歩いて行くと、不意に俺の体は殺気を感じた。


「うわっ! なんだ? 今までの奴とは全く違う……?」


これが強敵って奴か……。確かにオーラから半端じゃない!


俺は反射的に近くの木々に身を潜めた。


その時。


グオオオオオオオオオッ。


咆哮が辺りを覆う。


辺りのゴブリンどもは身震いしている。


俺も例外ではなく、かなり恐怖を感じた。


この時、俺は初めてこれが『狩られる』恐怖なんだと知ってしまった。


俺は『弱者』なんだと。


「一体なんなんだよ。おい……嘘だと言ってくれ……」


其処には今までのゴブリンどもとは程遠い、言うなれば「魔獣」がいた。



〜新出スキル紹介〜

(読み飛ばし可能)

ノーマルスキル『バインド』


対象に縄を括り付けて、捕らえる事が出来る。

最大10本まで出せる。


オリジナルスキル『龍殺しの舞』

辺り(大体10メートル程)に空を舞うナイフをたくさん召喚して無差別に切り裂きまくる。

上達するとナイフの数が増える。

一日10回制限。


並大抵のモンスターとは根本から違う威圧感。

この世の物とは言えない異形。


それは、「魔獣」そのものであった。


「やべえ……まさかあれほどのものとは……」


俺は必死に平常心を保とうとする。


「そうだ。攻撃とか試してみないと……」


斥候の意味がない。


「『加速』!『霧隠れ』! それで……『パライズソード』!」


まずは麻痺耐性を調べよう。


剣で切った相手を感電され……られなかった。


「オリジナルスキル習得『パライズシャウト』」


お情けの上位互換技習得。少し悲しいような……


グギャャャャ。


その「魔獣」は暴れだした。


「やべっ! 『高速転移』!」


元の茂みに戻った。


幸い、気づかれてはいない様だ。


「確かに行けた感覚は初めてなんだけどなぁ…… 麻痺は効かないっと……」


次だ。


「『霧隠れ』!」


霧隠れは使い勝手がいい。一日の使用制限がないから。


「喰らえ!『シールドクラッシュ!』」


これは相手のVIT無視で攻撃出来る大技。その代わり一日三回までの制限がある。


グジャッ!


俺の剣が、硬い「魔獣」の皮を突き破る。

鮮血が俺の体と剣に掛かる。


「きったねえなあ。洗うの面倒」


かなりの余裕ぶっこいているけれど、俺の心はかなり深刻なダメージを受けていた。

いつ発狂して暴れ回ってもおかしくない。


「魔獣」はまだ生きている。


ここまでスキル使ったのに。


ふと、最近習得した1つのスキルを思い出した。


あれなら……なんとかなるか?


「これで最後……」


使い所は無いかと探していたこの技、まさかこんな早くに発揮できるとは。


「『龍殺しの舞』!」


刹那、幾千のナイフ達が召喚される。

あの時みたく、周りの木々や、そして「魔獣」に。

ナイフの雨が降る。


そして、「魔獣」から血が溢れ出る。


「どうだ?やった……」


ここまで言って、俺は口を噤んだ。


「こ……『高速転移』!」


俺は何かを悟り、急速にその場を離れる。


そして、そのフラグは見事に回収された。


「まだ……生きてやがる……」


ナイフの雨が止んだが、「魔獣」は倒れそうになかった。まだその威圧を放ち続けている。


まだ粘るか。正直言ってしつこい。


最大火力ブッパしても生きてるとか……。


手強い相手だな。


「はぁ……。 とりあえず隊長の所に戻ろう」


こうして、俺は一時撤退した。


ひとまず、このことを報告しよう。


「簡単に掃討出来ないとはな。まさに井の中の蛙ってやつだな。俺の全火力で削れるHPは精々2割程が限界であろう。また新しいオリジナルスキルを習得したら話は別だが」


そのためには…


「俺が最強の作戦を考えてやろうじゃ無いか!燃えてきたぜ!」


この時点で、俺の頭は最高潮に燃え上がっていた。


いまなら、出来る気がする。




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