日常の中の異常 その3

次の日、その次の日も同じような日常を繰り返した。結局1週間は過ぎ、土日になった。この2日間はバイトが入っている。オープンからクローズまで。さぁ、バイトに行くぞ、と支度をする。今日も今日とて雨なので傘を持って家を出る。いつものようにポニーテールでキャップを被っている。白いTシャツに黒のパンツ。リュックを背負ってその中にはタオルやらなんやらを入れて。

カフェに着くとオーナーがコーヒーを入れてくれた。まだまだオーナーには追いつけないが私もコーヒーや紅茶を淹れるの、ここでバイトをするようになってから上手くなったものだ。ここのカフェは平日は20時までやるが土日は朝からオープンして18時には閉める。そのため学生の私もバイトしやすいのだ。

オーナーと雨ひどいね、と話しているとまたあのお客様が訪れた。

『いらっしゃいませ。』

そう言うとお客様は少し驚いたような顔をしていたがカウンター、空いてます?と聞いてくる。空いてますよ、と答えるとそこでお願いします、と。前のようにコーヒー片手に読書をし始めるお客様。少し気になって見ていると目が合い、ふっ、と笑われた。はずかしい。このお店、オーナーがいいって言ってるからいいんだろうけどお客さん、あんまり入らない。とてもいいお店だが隠れ家的っぽいからなと思う。

「ちょっと晴れたと思ったらまた雨ですね。」

そうオーナーと話しているお客様。

「お姉さんもそう思わない?」

そう声をかけてくるお客様。

『そうですね。まぁ、このお店から見る雨、結構いいので見てみません?』

そう言うと、ほんとだ、と返ってきた。

「休憩入っていいよ。」

そう微笑みながら言ってくれるオーナー。イケおじだ。ありがとうございます、と声をかけてからスタッフルームに行く。お客様が少ない時は奥のテーブルを使わせてくれる。私はそこでオーナーが淹れてくれたコーヒーとサンドイッチを食べながら店内のBGMをバックに期末試験の勉強を始めた。私が通う高校は校則が緩い。なぜなら偏差値が高く、成績さえとれば、大体のことは許される。私は成績、そこまで悪くは無いが気は抜けない。というか学年1位は譲りたくない。だから勉強する。カリカリとシャーペンを走らせていると

「俺も勉強しようかな。いいですか?オーナー。」

「いいよ。分からないとこがあったら遠慮なく聞いてくれていいからねぇ。」

そうニコニコしながら言ってくれる。私も時々お世話になっている。

そろそろ時間なのでバイトに戻る。と言っても正直暇なのでコーヒーの入れ方を教えてもらう。最初よりはマシになったけどまだまだオーナーには勝てません。お客様はメガネを掛けてノートと教科書と睨めっこしている。サラサラと書いているが難しそうだな、と思っているとオーナーがケーキを持ってきてパチン、とウインクしてきた。

イケおじだ。イケおじじゃなかったらそれできませんよ?まぁ、意図は分かったのでコーヒーとオーナー特製フルーツタルトをもってお客様の所まで行った。

『あの、良ければこれ。オーナーからのサービスです。』

そう言ってフルーツタルトとコーヒーを差し出すと目をパチパチとしえ

「いいの?」

と聞いてきた。私がオーナーの方を見ると

「ふふ、いいよ。頑張っている学生にはご褒美。」

微笑みながら言ってくれるオーナー。ありがとうございます、とはにかみながらいうお客様。

結局お客様は閉店まで勉強をしていた。すごい集中力。でもわかる、このお店って勉強めちゃくちゃしやすいんだよね。

結局お客様は閉店までいらっしゃった。分かる、ここのお店って勉強しやすい。オーナーも頭が良くて大体の質問は答えてくれる。

『お疲れ様です。』

「おつかれ、明日もよろしくね。」

『はい。』

答えてお店を去る。雨がまだ降っているので傘をさして雨の中を歩いていく。イヤホンから流れる音楽も雨に合わせて静かめの音楽を選択する。

そういえば食材買っていかないとな、と思い出したので最寄り駅を降りてからちょっと遠回りをしてスーパーに行く。スーパーではあれこれと色々かっていつも常備しているエコバッグに入れて帰る。

ザー、と雨が降っている中傘をさして家に帰る。今日は何を作ろう、パスタでいっか、と考えながら帰宅しそのままお風呂、洗濯、ごはんと全部テキトーに済ます。

ふと、明日はお客様、来るかな…。そう思っていた私がいた。

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