十月十八日

 不思議な一日を終えて、憂鬱な月曜日が来る、と思っていた。朝食を摂って支度をしたところで、ようやく、そうでないと気づいた。

 何度確認しても今は日曜日で、学校はない。昨日、いや、昨日と今日の間に経験したあの一日は、何もかもさっぱり消えて残っていないようだ。

「夢か……、?」

 それが、順当な考えだろう。彼女の痕跡は全て消えて、残るのは僕の記憶だけ。なら、あれは只の夢だったのだと。そう考えていから、僕は特に深く考えず、楽しい夢だったな、とだけ思って普通にその日を過ごした。

 そんな普通の夢ではないと、そう考え出したのは、幾日かが経ってからだった。

 その何日かの間、僕の夢には毎回彼女が登場した。

 初めてあの夢を見た次の日、つまり十月の十八日、僕はまた夢の中で目を覚ました。そしてまた彼女は同じように、おはよう、と言った。ただいま、とも。

 彼女も昨日のことを覚えていて、それはもはや不思議ではなかった。

 僕はこれはともかく楽しい不思議な夢なのだと思うことにして、深くは考えないことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る