第10話 クラス代表選抜試験

 二時間後。


 俺とリリス、それにクラスメイトたちは、敷地内のグラウンドを訪れていた。


 うちの高校のソレよりもはるかに広く、軽く地平線が見えそうだ。


 その中央あたりに佇む、巨大なゴーレムが目を引いた。


 ゴーレムは、直径100メートルはありそうな、岩石製の円形リングの上に立っていた。


 周辺には試験官と思しき教師たちの他、大勢のギャラリーが集まっていた。


 もう試験が済んだ、他のクラスの生徒たちだろう。


「観客多いな」

「試験結果が初期序列に直結するからね。他の生徒のパワーバランスを測っているんだよ」

「なるほどな」

「ローカルネットの情報だと、学年序列の暫定一位は、御三家のスーラ・サタンとライード・ルシファーの二人みたい。記録はどっちも15分だね」

「え? 制限時間とかあるんだな?」


 俺は、クロエ先生の姿を探して、声をかけた。


「先生、15分経っても二人以上の生徒が残っていたらどうなるんですか?」

「それは考えなくてもいいよ。そうならないために、ボクのゴーレムは全力だし、御三家のその二人以外は、全員10分もたなかったしね」

「どうせ10秒ももたない奴が制限時間の心配か?」


 頭上からの声を見上げると、トニーの長身が降ってきた。


 きっと、わざわざ魔術で空を飛んできたんだろう。目立ちたがり屋だな。


「トニー君、ケルベロスの調子はどうかな?」


 クロエ先生の問いかけに、トニーは鼻息で答えた。


「サモン」


 指を鳴らせば、空間に光の魔法陣が展開されて、そこから無傷のケルベロスが飛び出した。


 ——使い魔ってあんなこともできんだな。


「オレのケルベロスが誇る高速再生アビリティをナメるなよ。聖剣の一撃もこの通りだ」

『むしろ、高速再生アビリティに回復魔法の重ねがけでも完治に二時間かかったワタシの殺傷力を褒めて欲しいですね』

「ナマクラの棒切れが、主人を守れるなら守ってみやがれ」


 エクの挑発には乗らず、トニーは余裕の表情だった。


「じゃあみんな、リングに上がってくれ」


 クロエ先生が手を叩くと、みんなは使い魔を連れて、リングに飛び乗っていった。


「じゃあリリス、行こうぜ」

「うん、一緒に頑張ろうね、刀夜」


 リリスは眉を引き締めると、両肘をわき腹に付けて、ちっちゃなガッツポーズを作った。かわいい。


 すると、彼女の豊かな胸が制服越しにも揺れて、ちょっと幸せだった。


『では刀夜様、ワタシとのレッスンを思い出しながら、冷静にいきましょう』

「おう」


 エクに言われるまま、俺は、さっきまでの特訓を思い出した。

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