収容所群党

ジュン

第1話

革命家のクスマルは友人のキューピッズと共に『収容所群党宣言』を発表した。

すべての人が愛する人を失わないように、いくつもの収容所を造って、そこに人々を住まわせるように説いたのだった。

そういうわけで、地球上は収容所群で覆いつくされたのだった。

すべての人が収容所の中で暮らすのだが、あるとき、ある収容所からほかの収容所に移住する必要がある事態が起きた。

さて、ほかの収容所に移住すると、そこでは、よそ者が来たと冷遇される。

彼は思った。

確かに、収容所にいれば愛する人を失わない。

永遠に。

収容所の壁をすべての人が自分の心の壁にまで延長させて、愛する人との「交わり」を拒むのだから。

守られていることは、愛することを躊躇させる。

実のところ、愛する人を失わないよう、あえて、愛する人を失うかもしれない世界に踏み出さなければ、本当の意味で愛することの尊さを知ることは不可能です。

わたしたちは、収容所群を壊していく仕事をしていかないといけない。

そう、「収容所奮闘」だ。

しかし、失ってはいけない収容所が一つだけある。

「すべての人の手袋さ」

失礼。

そっちのグローブじゃなかった。

グローブを抱く手は温かい方がいいのは事実だけれど。


終わり


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収容所群党 ジュン @mizukubo

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