第7話 久保田君の故郷

「僕の星は地球から遠いとおい場所にあるんだ」


久保田君は語り始めた。

故郷の惑星は、高度に科学が発展し、そのために星のほとんどの燃料が荒らされ、岩や砂地ばかりの荒廃した環境だったらしい。


「地球を見た時は驚いたよ。本当に美しい水と緑と白い雲の惑星で」


久保田君は目を輝かせる。故郷はその資源の取り合いのために争いが絶えず、久保田君は争いに敗れ、弾かれる形で故郷の星を離れなくては行けなかったらしい。


そして、流れついたのが、「地球」だった。


詳しくは語りたがらない久保田君だったが、超能力を駆使してヒト型に変身すると(何故、こんなもっさりしたブサ男なのだろう)これまた超能力を駆使して(便利だな)、地球の住民としての生活をし始めたらしい。


そして、地球は美しいばかりでなくその文化面や民度に強く共感と尊敬の念を覚えた、と久保田君は熱く語った。

ここら辺は、地球人(?)として嬉しく思った俺だった。


「人がプリンであんなに激怒するとは思わなかった」ということは言うのを忘れなかったが久保田君は語りの中で俺や地球に住む人間を褒めてくれた。


俺と初めて会った時、A定食の「A」なるものがわからず、学食の利用を躊躇していたところ、食べてみてその菜っ葉の味に感動したこと。

(久保田君の惑星には資源なさすぎて、岩や砂を食物に変換する装置?で飢えをしのいでいたらしい)

たまたま、重そうな荷物を持っていたおばあさんを助けたところ、古い家を紹介してもらったこと。

古すぎてさすがに文明エリート育ちの久保田君には不便だったところ、俺がルームシェア生活を提案してくれたこと。

ヒト型を保つのに実は精一杯で、会話すらまともにできない自分の隣に君がいてくれたのは安心だった、と久保田君は言ってくれた。


「……久保田君って、ほんとはどんな姿なの?」

「いや、それは見ない方がいいよ」


見ないことにする。俺はクリーチャーや怪物系のたぐいは苦手だ。


地球は素晴らしいよ。


そう目を輝かす久保田君を見て、俺は柄にもなく少し感じ入ってしまった。

地球はウイルスだ、戦争だ、経済がどうの、そんなニュースであふれているのに、それを見越してもなお、久保田君は「地球の美しさ」を強調する。


なんだ、俺が知ってた世間ってちっぽけなんだな。

素直にそう思えた。


久保田君は一通り話し終えると、「ああ喉が渇いた」と固まっていないプリンをごくごくと飲んだ。


大丈夫かよ、と思ったが少し美味しそうだったので俺も真似した。

激甘だった。


「そんでよー……、久保田君」


俺は、目をパチクリする久保田君に投げかけた。


「俺に出来ることってない?」

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