第2話 ルームシェア生活
久保田君にある日、住んでいる家はどこかと聞いてみた。
俺はちょうど、実家から毎日1時間かけて通うのがダルくなってきたので、大学の近くにアパートでも借りようかと思っていたのだ。そこで、気になったのが今の久保田君の家である。この謎のもじゃもじゃ頭は一体どんな家に住んでいるのか。
疑問を投げかけると、久保田君は眠そうな顔をパチクリさせて、「今、起きました」とばかりの表情になった。
「え?家ですか。それが、今、困っておりまして」
聞けば、久保田君の家は大学から2時間かかる上に、今、立ち退きの危機が訪れているらしい。聞けば、家族もいず、一人暮らしだと言う。
「いやー、屋根も雨漏りする住宅でして」
今時、雨漏りなんて相当ボロい家だなと俺は思った。でも、馬鹿にしているわけではないが、久保田君なら、キラキラの新築高層マンションに住むより、年季の入った文化住宅の方が合っている。一人で雨漏りするような家に住んでいたとは……俺は改めて久保田君を変な奴だと思った。
そんな久保田君に俺はピカリと光る提案を出してみた。
「ルームシェア?」
久保田君はルームシェアの概念すら知らなかったらしい。俺は家賃が半額になるという自分の利益のために久保田君に必死にルームシェアの利点を語った。
「……プライバシーは保てるのですか?」
久保田君がそこだけ強く、といった調子で尋ねるので、俺はきちんと個室に鍵がついた物件があることを懇切丁寧に教えた。
久保田君は俺の話に2、3度深く頷くと、
「それなら、メリットばかりですね。ぜひ、よろしくお願いいたします」
と丁寧なお辞儀をした。
俺も「よろしく」と言いながら、少しワクワクする気持ちがした。
俺は生まれてこのかた、実家から離れたことがないのだ。
久保田君はマイペースで相変わらずよくわからない奴だが、悪い奴じゃない。
何故、雨漏りするボロ家に一人で住んでいるのか、疑問が残るが、家賃が安く済むならそれに越したことはない。
俺は夕方、不動産会社を回って目ぼしい物件の仮契約を済ませた。一人暮らしをしていたはずなのに契約について分からない様子の久保田君に必要書類を用意させ、本契約と相成った。
そうして、とんとん拍子に久保田君との共同生活が始まったのである。
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