「先生……。帰りたい」

「奇遇だな。俺もとっとと帰って、明日の授業プリント作りたいよ」

　私はまたもや補習中。

あれからも先生の態度は変わらない。

正直、あのキスはからかっただけなのかもしれないと思い始めていた。

「友達にさぁ、補習受けさせられてるって言ったら何て言われたと思う？」

　問い掛けてみたけど、先生の表情は変わらない。

「さぁ？」

　本当にどうでも良さそうな、気のない返事。

それでも反応を返してくれることが嬉しかった。

「『罰ゲームじゃん』だって」

「ふぅん。嫌なら来なくていいよ」

　さらりと言う。

やっぱりからかっただけなんだ。

わかってたけど、相手にされてない感じで悲しくなる。

「んで、赤点取って留年しろ」

冷たい言葉に涙が出そうになる。

そこまで言わなくてもいいじゃないか。

「そしたら、来年も俺が現国みてやるよ」

　先生は意地悪な顔して笑っていた。

留年は嫌だけど、こんな罰ゲームなら大歓迎だ。

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