逢魔が時の狼さん
「『逢魔が時』は『魔に逢う時』と書く。ちょうど今ぐらいの薄暗くなってきた時間のことだ。昔は魔物や妖怪などに遭遇する時間だと言われていたんだが……」
「先生、どうして私にキスしたの?」
唐突な質問に先生は眉間に皺を寄せた。
少し考える素振りしてから答えてくれた。
「魔がさした……から?」
「魔がさしたって何? しかも疑問系?」
「五月蠅い。暗くなってきたからさっさと帰れ」
あっさりと教室から追い出された。
本当は不安だった。
ただの気まぐれかもしれないって何度思ったことだろう。
教室を出る寸前、先生の呟きが聞こえた。
「生徒にだけは惚れないと思ってたんだけどな」
ポツリと聞こえた声はきっと聞き間違えじゃない。
自然とにやける顔を押さえながら校門を出た。
外は陽が落ちてきて薄暗い。
先生が逢魔が時なんて言っていたから何となく不気味な気がしてしまう。
私の前に車が止まった。
乗っていたのは先生だった。
「送る。補習帰りになんかあったら学校の責任問題になる」
私はびっくりしたけど、先生の車の助手席に座った。
なんかすごく緊張する。
車の運転している先生の横顔はいつもよりさらに大人っぽくてかっこいい。
思わず見つめてしまう。
「お前さ……送り狼って言葉、知ってるか?」
先生はそう言うとハンドルを切った。
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