第7話 番外編 龍と麒麟
「なぜ、我が娘の目覚めを妨げたのです。」
問いかけに少し驚いた。
麒麟が選んだ宿主は強い。その身を借りて語ったことは色々と筒抜けになってしまう。そんな危険を冒してまで、直接話しかけてこようとは思わなかった。
「蜜月はまだ童だ。今目覚めれば人として損なわれる。下手をすると人からかけ離れたモノになってしまうぞ。」
麒麟の目に力が籠もる。
「その何がいけないのです。我らはあなたの眷属だ。私も、蜜月も、煌の者たちも。全てはあなたから生まれたあなたのお力の欠片だ。人である事など、その事実の前には瑣末なことに過ぎない。」
そうだ。そなたはそういうものだ。私の目となるべく生まれ、私のために生きてきて、私のために生きてゆく。
「だがな、私は人が好きなのだ。人であることを損ないたくないのだよ。」
私は眠っている。
これは夢だ。眠り続ける私の夢。
眠る私の身には生き物があふれ、私の心臓からは煌の子たちが生まれてくる。
「なぜです。あなたは目覚めたっていいんだ。どうせ千歳の試がくる。他の龍の眷属だって黙ってはいない。実際に索冥が仕掛けてきたのを見たでしょう。煌の子でも弱ければ、索冥には縛ることができるのですよ。」
私達、始原の生き物は大きすぎて、もはや身動きもままならない。眠りを選んだ私達が生み出した眷属は、長い長い夢の中で私達を恋しがる。千年の約束を追い求めてしまうほどに。
「私が目覚めてどうするのだ。私は自分の夢を愛している。目覚めれば夢は破れてしまうではないか。」
どうか眠らせておいてほしい。
このままずっと夢見ていたい。
この愛おしい人の子の世の夢を破ってしまいたくはない。
「あなただけ眠ってはいられません。龍の眷属たちは皆動くでしょう。世界の中心で眠るあなたを覚ますために。」
私は仮の身体の翼を羽ばたかせ、麒麟の肩に降り立つ。
「ではお前が私の眠りを守っておくれ。私の眷属たる麒麟よ。」
麒麟は泣き出しそうな顔でうつむいた。
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