第16話
カルラ、俺が悪かった。だが解ってくれ。それくらいできなかったら、俺はこれからの道で躓く運命となってしまう。言ったよな、どうしようと、夢を貫き通せって...
「俺は天才だったんだ。だがその癖才能がなくてね、こうするしかなかったんだよ」
「こうするって...」
「ロボット作る事なんてさ、めっちゃくちゃ難しいんだよ!色んな部品あるしさ、人の真似事をさせる為の開発や研究に何年もの歳月がかかる。他の奴らにはできるかもしれない、だが俺には無理だった...それに気づいた時は落ち込んだよ」
「俺。俺の名はマイケルっていうんだ」
「そうか、マイケル」
「俺はここで終わりなんだな」
「その通り。ちゃんと再利用させてもらうよ」
「再利用...それって転生のようなもんか?」
「まあ、そう考えられない訳でもないが」
「俺の記憶って、どこに行くんだ」
「記憶はそのままだ。コントロールが効かないだけさ」
「そうか」
「準備はいいか?」
「ああ、いつでも」
マイケルの首に手をかざした。今度は表情のある人間と顔を合わせている。なんだか、ロボットの方とあまり変わらないじゃないか。
注射をうつ。
マイケルは立ったまま目を閉じた。
目を開けたらまたロボットの中にいた。
それでも今回はちゃんと目に光が入って来る。身体の周りに取り付けられる金属プレートも見えるし、工場の中で動く風景も見える。
俺はどうやらベルトコンベヤーの上にいるらしい。
俺の仕上げが終わったらさっきの男が話しかける。
「お前は買い主に従順でいろ。食事もクソも気付かれないようにしろ。極度な犯罪はするな」
頭が勝手に頷く。
とても不思議な感覚だ。以前は自分のものだったと言える最大のものが俺をただの乗客として載せている。
「歩け」
命令通りに動く。これは、あれに似てるな。性欲に駆られて、脳の奥では「やめろ、やめろ」と自分が命じても、手が神の言いなりのように動く。主導権が譲られたのだ。
工場での生活は新鮮だった。そして、誰かに買い取られた時、また新しい人生が訪れるのだとワクワクした。町のはずれに住む金持ち。その小さな娘が表情を輝かせて俺に抱き着いた時、俺は本当に生まれ変わった事を実感した。
生まれて初めての幸せを掴んだ。
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