第10話

メンテナンスは一週間後に行って欲しいそうだ。

それまでにロボットを受け入れる為の倉庫の掃除や、パーツの手入れと補給をしなければならない。

人気(ひとけ)のない工場の中を歩く。

高くそびえたつ機具がスーパーの長い棚のように通路を築いている。その間を行ったり来たりした、ただひたすらに。暗い屋根の下、一人で。

昔の事を思い出すのは嫌いだ。そこにあるのは惨めな自分ばかりだから、ふと思い出す度に今が汚染される気がしてしまう。

今日は休み、いや、防音だったか。分からなくなってくる。嘘ばっかり吐いていると自分が消えていく感じがしてならない。嘘を吐いているからこそ、なりたい自分になれたのになあ。

まだまだ歩く。

狭い檻の中でグルグルぐるぐる。動物園の熊のようだ。

しばらくしたら息が上がり、気付いたら止まっていた。

「カルラ...」

足の真下には大きな落とし戸がくっきりと口を閉じている。

「カルラ...」

腰を入れてその顎を引き開いた。

「あああ、逢ってくれ」

そこにあるのは暗闇へと続く階段の通路。隠された地下牢が内臓のように曲がりくねっている。俺しか知らない部屋。

いや、俺とカルラか。

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