第9話 交じる

「カールさん、ありがとうございました」

アレクサンドルが手を差し出した。

「こちらこそ、向こうではうまくいってるのか?」

「はい、監視官が定期的に事情を知らせているので、順調です」

「そうか...いつ、おわりそうなんだ?」

「もうすぐでしょうね」

「じゃあ、メンテナンスの時がきたら知らせてくれ」

「もちろん、条件は覚えています」

「そうか...」


飛び散る弾丸が岩を砂に変えていく。


「またな、アレクサンドル」


手榴弾の波が頭上を通った。


「今後もよろしくお願いします、カールさん」


巻き起こる打撲の嵐が俺を飲み込む。そして、全てが暗くなった。


「そういえば、今日も休みの日なんですか?」

「いや、今日は休みではない」

「それにしてもやけに静かなんですねえ」

「防音を心がけていますから」

「この町のみんなも、あなたみたいな人が社長でさぞ嬉しいでしょうね」

「もちろん、文句を言われていては居づらいですし」

「誰もクレーム処理はしたくないですからね、では、また」

「ああ、またな」

アレクサンドルは帽子を被り、歩き去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る