第3話

俺がロボットを作り出すまで感じてきたのは挫折、そして虚栄心。

二つをバランスに掛けるのは無駄だと知っているが、そんなバランスの旋回軸が面白いほどに素早く回転している。見えが失敗する度に傷つく。傷が癒えると前よりも強くなっている。自分の核心とそれをあざける他人はどうも水と油のようで、実はスムージーみたいに甘く混ざりあっていた。

俺がロボットを作り出すまで感じてきた二つの感情の一つが、取引を終わらせた瞬間に何処かへと消えた。


あいつもそいつもどいつもこいつも俺の配下。億万長者である俺への対応はお前らとは違うんだよ!


「カール、いただきました!それでも、思ったより遅かったなあ、昨日までハラハラしてたぜ」

友達は借金をすべて返すチェックを受け取ってそう言った。

俺はつまみを食べる事に夢中で返事はしなかった。

「そういえばお前の彼女、カルラ?いつ会わせてくれるんだよ、今度三人で動物園にでも行こうよ」

「どうして動物園なんだよ?」

いや本当にマジで、何で?

「いいじゃん、昔もしょっちゅう行ってたし、俺も懐かしくて行きたくなったんだよ」

「まあ、そうだけどさあ、彼女が行きたいかどうか...ほら、彼女生まれながらの譲さんだから、子供の頃は俺達と違って本格的なサファリとかに行ってんだよ」

「ええー?だけど逆に庶民動物園にも興味あるかもよ」

「それはないよー」

「...まあお前が会わせたくない理由なんてわかるけどさ」

「はっ!?」

慎重に聞いた。

「お前ったら、そんなにかっこいい俺に取られる事気にしてんのかあ?」

「なんだ。それかよ」

「心配するな、俺はこれでも紳士だ。まあ、それより、気になる噂を聞いて君を呼んだんだけど」

「何だ」

「二年?いや、もう三年近いか、前に戦争が始まった事くらいは知ってるだろう。ここから程遠い中東だけどさ」

「ああ、知ってるが」

「ここではあまり関心を持たない人が多いが、ある平和主義者団体と、戦争を始めた政府では密に話題になっている」

「...そうか。お前がその平和主義者の奴なのか?」

「いや、そうでもない、だがお前はどうだ?噂というのが、政府はカールのロボットを武装して、戦場へと援軍として送り込みたいらしい、ってことだが」

「いや、全く、政府らしい発想だよ」

「カールは何も知らないのか?」

「初耳だよ」

「その内政府の連中が声をかけてくるかもしれないぞ。その時の為に返事を用意した方がいい」

「わかった、考えとくよ」

「間違いじゃないほうの選択をしてくれ」

「ああ、だがもちろん、奴らの交渉スキルにもよるな」

俺は親指と人差し指をこすり合わせて笑った。

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