【第二章】◆決戦は日曜日
翌日、日曜日。
今日は、斎川家の家宝「奇跡のサファイア」が盗まれるその予定日。
斎川家の当主である斎川
そして今、そんな俺と夏凪はタクシーに乗って目的地へ移動している。
「
後部座席、隣に座った夏凪が
昨日。俺はあのリハーサルが終わった後、いつかも使った喫茶店で、夏凪と今日の段取りについて話し合っていた。その際に俺は、斎川唯が隠している秘密について夏凪にも初めて共有したのだった。
「信じてくれたから、今ここにいるんじゃないのか?」
「それは、一応。でもあっちの方は大丈夫? さすがにもぬけの殻ってわけにも……」
「ああ、そっちも手は打ってある。
「……いつか訊こうと思ってたんだけど……あの人って何者?」
「ひとりで軍隊一個分の戦闘力はある」
「説明になってるようでなってないんだけど」
悪いが俺もあの人のすべてを把握しているわけではないんだ。ただ、とにかく頼りになる人であることは間違いない。
「なにか不安なことでもあるのか?」
「別にないけど。……ただ、なんとなく釈然としないだけ」
「なにが?」
「結局、
探偵はあたしなのに。
そう言って
「今回はたまたまだ」
「そうかな」
「ああ。きっとそのうち、俺がお前に助けられる日も来るだろ」
どちらかと言えば、今まで俺はそっち側のポジションばかりだったんだ。たまには少しぐらい働かないと、お前の心臓に怒られるからな。
「そろそろ開演時間か」
俺は腕時計に目を落とす。
「これで間に合わなかったら
もうすぐ
「なに、やっぱり気になるの?」
さっきの件は納得してくれたのか、夏凪がわずかに口角を上げて
「あくまで仕事としてだ。『らずべりー×ぐりずりー』に興味はない。昨日も喫茶店で言ったろ?」
「言ってたけどさあ、いや、演技であそこまでできる? 昨日の君塚、超キモかったよ」
「超キモかったとか言うな。女子高生から言われるキモいは、なによりも傷つく」
「実は今も、本当は趣味であそこに向かってる可能性もあるなって思ってる」
「あほ。仕事じゃなかったら行かねえよ、ドームになんて」
軽口を
しかし、既に手が打ってあるとは言え、事に間に合わなければ意味がない。
「少し、急いでほしい」
俺は、タクシーのドライバーに声をかける。
「……シートベルトを」
帽子の下の金髪。
その影に隠れた濁った瞳が、ミラー越しに俺をちらりと見た。
「『81』には間に合いたいよな」
「やっぱりハマってない?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます