第19話 業務内容を知る

「俺とお前の仕事はアレの片づけだ」


 と、オッサンが指を指した先。

 大ホールの誰もが見ていない、見ないように努めている、空白のスペース。


 そこには赤黒い染みができあがっていた。

 染みの真ん中に横たわっているのは、どう見ても人間だった。


「2年目如きの駆け出しが調子に乗るからすぐに人が死ぬ。面倒で仕方ない」

「あのオッサン」

「なんだ?」

「俺たちの、仕事って」

「辞令に書いてあっただろ。俺たちの部署は――」

「――環境整備課、です」



 オッサンはゴーグル越しに俺を睨み、一度頷いた。



「そう。社員皆が働きやすい環境を創るのが俺たちの業務だ。業務にはうっかり出来上がった死体の始末も含まれてる」



 その後のことを、俺は殆ど覚えていない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る