第1話:よくある出来事

学校・遊び・仕事……

日常の中に手が離せない事は、

多々起こっている。


宿題が終わらない

ここまでやりたい

今日中に仕上げないと


時を経て、段々と削られている

睡眠時間……


今日も1人、深夜遅くまで

作業を続ける人がいる。




___とある一室___



会社員の男は、今日も日課の報告書を仕上げていた。


あと1時間、2時間と時が過ぎ……

やっとの思いで床に就くも

数時間後には起きなければならない。


そうして、寝る時間を犠牲に仕事を進め

2,3か月後に、やっと終わり

休み返上で頑張った体を

癒す時間が訪れる……



______


夕日が差し込む部屋で

最後の確認をして

送信ボタンをクリックする


「お疲れ様です」

優しい女性の笑顔が、

俺に向けられる


「ああ、お疲れ様」

隣のデスクに座る彼女に

俺も笑顔で返す


目の前のノートパソコンの電源を切り

そっと、畳むと


彼女に目を移し

「これからちょっと、食事でもどうかな?」

と問いかける


「良いですね、ご一緒します」

笑顔で返答してくれて


小さくガッツポーズをする


少し前から気になっていたけど

忙しくてなかなか、声がかけられなかったけど


やっと食事に誘えた


帰り支度を整え、以前に目を付けていた

美味しい定食屋の場所を携帯でチェック


少し気どりながら

お店に着くと

天ぷら、ビールと順番に運ばれてくる


「私、実は……」

唐突に彼女が口を開く、


少しドキッとしながら、

どうしたの?と

淡い期待を胸に問いかける


「す、好きなんですけど……私と……」


俺は抑えてた気持ちが我慢できず……


彼女の言葉を最後まで聞かずに……



______


「お願いします!!!」

と、布団から飛び起きる……


朝日がカーテンを突き向けて、

部屋を淡く照らす中、

自分の部屋を見回す。


なんだ、夢かぁ……


少しがっかりしながら、

時計を見る。


やっと大きな企画が終わり

今日は念願の休み


布団の上で、少しずつ鮮明になる夢を

冷静に分析してみる。


今思えば、変な所が多々、存在している。


会社の中で、どうして自分と彼女しかいないのか?

エレベーターも階段も使わず、扉さえ開けず……

どうやって出て、お店に向かったのか?


注文どころか、メニューも見てないのに、

何故、商品が運ばれてくる?


そして気になる彼女は、既婚者である、

しかも結婚したのは、つい先日の話……


そんな彼女が俺に対して告白など……


ましては新婚で、今が一番輝いてる時に

そんな旨い話があるはずがない……


今思えばあのお店、

以前に特集でテレビで美味しいと紹介されてて

天ぷら食べて、ビールを飲む芸能人を見て

羨ましく感じたのを覚えている。


そもそも、県外のお店で

気軽に仕事帰りには、行けない場所、


急に笑いが込み上げて来た。


「まさに、夢だな!」

1人納得して、膝を叩く


今日は時間もあるし、

そのお店、わざわざ食べに行くか。


彼女の夢は叶わないけど

美味しい食事は叶えられる。


普段はしない朝風呂を堪能し

少し遠出になるので、しっかり支度を終え

玄関の扉を開けた……




___夜___


朝から出かけ、

道中の景色を楽しみながら

目的地で観光し、

噂の定食をしっかり満喫し……


ようやく、自分の部屋に帰ってきた。


ゆっくり風呂に入り

晩酌と帰りにレンタルしたDVDを見て

布団に潜る。


次の日も休みと言う状況下でしかできない


贅沢な1日、

電気を消し真っ暗になった天井を眺めながら

朝の出来事、昨日の夢を思い出す……


「夢の中なら、良いよな……」

そっと……

夢の続きを見られますように……

そう願いながら、目を閉じた。



______



夕日の差し込む会社の一室……


これは、あの夢か!

隣には彼女がノートパソコンを畳み、

俺の方へ振り向くと


「お疲れ様です」

と優しく微笑む……


「ああ、お疲れ様」

今度はもっと、長く夢を続けてみるぞ!


今回はハッキリと意識がある、夢だと理解している


椅子から離れ、彼女の隣に立つと

少し体を屈めて

彼女の肩を抱きながら、


「今日、この後少しいいかな?」


すると彼女は少し、顔を赤らめながら

笑顔で……


「良いですよ」


さすが、俺の夢!都合の良い展開だ!

このまま、キスぐらい、出来ちゃうんじゃないか?


ふいに、そのまま顔を近づけてみる、

それに察してか、彼女は

目を閉じて、唇を向けて来てくれた……


心臓が激しく動く感覚がする、

やった!夢だもんな!


しかし

その瞬間、彼女の肩に回してた手に違和感を感じる……


目を自分の手に向ける、

「ん?」

手が真っ赤に染まっている……


「おわっ?!」


慌てて手を引き、彼女を見る……


彼女は目を閉じたまま、ピクリとも動かない、

この時点で、違和感がさらに大きくなる……


マネキン?人形?

そう感じた……

さっきまで、はっきり見えていた世界が

薄く灰色掛かって見える


窓の外から、何かが蠢く感覚……


振り返ると廃墟のように割れた窓、

近寄り、窓の外をのぞくと、

下の方の景色では、人と思えない

人の形の人たちが歩いている……


もう一度、彼女の座っていた方へ

目を向けると


彼女だった物に、小さな人型の何かが、

数匹、張り付いてる……


ヤバい……俺も喰われる……


直感的に窓に足を掛け、勢いよく飛び出す……


落下の激しい風を浴びて、

急激に近づいてくる地面を見て……



______



全身に汗をかき、

激しく動く心臓の感覚を感じながら、

布団にうつ伏せの状態で、

枕を握りしめている……


真っ暗の部屋で、携帯に手を伸ばし、

開くと3:43……


携帯をパタンと閉じると、

ゆっくり天井を眺める……


「なんだよ……」


また、少し頭を冷やして

夢を分析してみる……


廃墟みたいに割れた窓……


映画か?……ドラマだったかな……

ホラー映画か、じゃあ……


窓の外の人のような物も、たぶん

ゾンビだろう……


ちっさいのは……

本かなんかで、小学生の頃……

妖精?か、何かが出てくる、絵本だな。


徐々に夢の正体が分かってくると

少し安心してきた。


「あ~、まったく……」

うっすら、笑みを浮かべ


「変なタイミングで、出てくんなよ」

と、ぼやいた。


でも、窓から飛び出して、

どんどん地面が近づいてくる……


あの感覚……あの映像……


いったい……どこで……?

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