9.鯛を食べタイ (3829)

醤酢ひしほすに ひるつきてて たひねがふ われになせそ 水葱なぎあつもの


(味噌と酢に ニンニクをつき合わせて 鯛が欲しい 私に見せないでくれ 水葱の吸い物などは)

巻16 3829番



なかなかグルメな歌だ。


なるほど、万葉の人々はこんなふうに鯛を調理していたのか。とはいっても、醤は厳密には味噌とはちょっと違うようだし(※)、ニンニクと訳した「蒜」という言葉もニンニク以外にノビルやネギも含む言葉らしいからレシピを復元するのは難しいかもしれない。


味の濃い調味料に、薬味をガンガン加えるのは鯛の臭みを消すとか、都に運ぶ間にすこし傷んだのをごまかすためだろう。


この歌では、鯛を加熱したのか、生で食べたのかわからないが、私の勘と好みでは生食の気がする。きっとご飯によくあったのではないだろうか。


「水葱の羹」は水草のミズアオイを使った吸い物の事。季節外れのメニューだったと解する説や、いつでも食べられる日常的な料理だったとする説がある。


鯛の料理、やはりここまで具体的に描写されると実際に作って食べてみたくなる。読者の皆さまも、今日から「万葉クッキング」はじめてみてはいかがだろうか。




(※)「醤」については、延喜式という古文書に2種類の製法が記されているらしい。そうはいっても、万葉集の時代と延喜式の平安中期では数百年の開きがあるのであくまでも参考程度にとどめておいたほうがいいだろう。

村岡 祥次、「日本食文化の醤油を知る」

http://www.eonet.ne.jp/~shoyu/mametisiki/reference-10.html






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