6.ひぐらしのなく声は (2157)

夕影ゆふかげに くひぐらし ここだくも ごとにけど かぬこゑかも


(夕暮れに やって来て鳴くひぐらし こんなにも まいにち聞くけど あきない声だなあ)

巻10 2157番


いやあ、暑い暑い。いつの間にか夏になってしまった。外では蝉が元気に鳴いている。


というわけで蝉を詠んだ歌を一首。


え、ヒグラシ?あのヒグラシ?ちょっと、怖くない?と思われたかもしれない。


私もそう思った。


ヒグラシといえば、よくミステリードラマやなんかで、森とか林で人が殺されたときによく流れる鳴き声ではないか。


某ホラー&ミステリーなゲームの作品名にも使われてしまうくらいに、ヒグラシが鳴けば人が死ぬ、という感覚は現代人の中に浸透している気がする。


たしかに、森の中に響くあの独特の「ケケケケケケ」という鳴き声を聞くと、最初は「山に来たなあ~」と感じるが、だんだんと森の中の孤独感、さらには恐怖感のほうがまさってくる。


そのヒグラシの鳴き声を、聞いても聞いても飽きないとは。


ヒグラシ違いではないのか。動植物を指す単語では、たまに古語と現代語で指す対象が変わってしまっているものもある。


辞書を引くと、


ひぐらし【蜩】

蝉の一種。「かなかな」と鳴く。(全訳古語辞典 第三版、旺文社)




かなかな?初めて聞くオノマトペだ。


ネットでも調べてみると、「セミの図鑑」というサイトがあった。


書いてあることをまとめると、近くで聞くと「ケケケケケケケケケケ」、ちょっと離れると「カナカナカナ!」、さらに離れると「シャンシャンシャンシャン」ということになる。


なるほど、距離によって聞いた感じが変わるのか。


さらに読み進めると、「やや物悲しく清涼感を与える声。夏の夕暮れ風呂上りに避暑地で聞くと最高。」とのこと。おもしろい。


おっと、本題に戻らねば。




辞書とサイトで、「かなかな」が共通しているから、歌の中の「ヒグラシ」は現在私たちが言うヒグラシを指すということで間違いなさそうだ。


ヒグラシが「来鳴く」ということは、作者は家から出ずに、すこし遠くのヒグラシの鳴き声を聞いたのだろうか。


うーむ、なんだか実際に山に入って聞きたくなってきた。距離で聞こえ方が違うというのも、確認してみたい。


以外に、聴き飽きない鳴き声なのかもしれない。





参考サイト

SAISHO Yasumasa, セミの図鑑 ヒグラシ, (2011), http://zikade.world.coocan.jp/zukan/higurashi/index.html



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