3.大和三山の三角関係(13)

香久山かぐやまは 畝傍うねび雄々ををしと 耳成みみなしと あらそひき 神代かむよより かくにあるらし いにしへも しかにあれこそ うつせみも つまを あらそふらしき

巻1 13番


(天香久山が 畝傍山が男らしいと 耳成山と 争いあった 神話の時代から そうであったらしい はるか昔も そうあるのだ 今の時代も 妻をめぐって 争うらしい)


今のところ私が万葉集で一番気に入っている作品である。

まず、スケールがでかい。大和三山が恋人を巡ってバトル!?平野がぶっ飛んじまうじゃないか!!

そして、よく読むと謎が多い。いまいち理解できない。読めば読むほどわからなくなる。


読み初めでは、畝傍山が男で、香久山と耳成山が女なのかな、と思う。ところが、最後の二句で読者の想像は裏切られる。「妻」を争っただって?


「男らしい」「妻」ってドユコト?


待てよ、昔は「夫」と書いて「つま」と読む、つまり男の配偶者のことも「つま」と呼ぶこともあったと聞いた。誤変換かも知れない。冷静になって原文を見て見よう。


問題の部分は、「嬬」という字が書いてある。女偏の、「つま」である。


……。

やはり文字通り、畝傍山は男らしくて勇ましい女ということか?


しかし男の香久山と耳成山がそろいにそろって勇ましい女が好きというのもどうなのだろう……。どちらか片方はおしとやかな女の子が好きとかでもよさそうなものを……。


もしかして……

三山ともみんな女?


それなら男のような女を好きになってもおかしくないはずだ。

少し無理があるかもしれない。しかし考えうるシチュエーションの中でこれが一番しっくりくる。


そう考えると、これは日本最古の百合文学!


なんということだ、こんなところで元祖・百合を発見するなんて!

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