第42話 腰巾着が裏切るはずがない……。
放課後、俺と玄白はサブとモブを連れて高校を出る。
高校を出た駅の近くでクラス4大美少女(おまけ扱いも疲れた……。)と待ち合わせている。
この光景を見たらまるで合コンにでもいくような雰囲気だが、玄白の話では違うらしい。いや、用が済んだらカラオケに行くらしいから間違いではないと思うのだが……、その用すら俺は聞いていないので半信半疑だ。
おそらく女子たちも要件は聞かされていないだろうから、俺以上に疑っているのではないかと思う。だが、なぜか4人揃って同行を願い出てきたのはなぜだろう。
おそらく玄白目当てなのだろう。
モテるやつは憎いね!!と、玄白のセリフにノシをつけて返したくなる。
そうこうして居るうちに、俺たちはクラス4大美少女と合流する。
義妹は俺たちを見るなり、「げっ……。」と言う表情を浮かべてアスの背後に隠れる。
義妹の様子を見て、やはり俺が嫌いなのかと落ち込みそうになる。
「あれ、モブ山君にサブ川君じゃん。どうしたの?」
幼馴染が尋ねると、二人の代わりに玄白が答えを返す。
「こいつらは今日の用事の助っ人だ。だから用事が終わったら仲良くしてやってくれ。」
「なぁ、さっきから用事ってなんなんだよ?女子まで連れていく用事って……。」
玄白の本心を引き出そうと試みるが、玄白は楽しそうに笑う。
「まぁ良いからついてきなって……。」
と言って、早々と駅の改札を抜けて行ってしまった。
しょうがないので俺たちは渋々彼の後を追う。
すると、後ろから誰かがちょいちょいと俺の袖口を引っ張る。
俺の袖を引いたやつはどうやら義妹だったようで、俺はいと驚いてしまう。
「……ねぇ。あんたは何があるのか聞いていないの?」
「はひ、聞いていないでおじゃります!!」
初めて義妹から罵倒じゃない言葉が飛んできた事に驚きを隠せない。
「何よ、その口調は。って、呼び出した当人が何をするか知らないってどう言う事よ?」
俺は普通の会話をする義妹に対して変な口調で答えると、義妹は訝しんだ。
「俺も聞かされてないでありますよ!!カラオケに付き合えって言われたくらいで後は何も聞いていないであります!!」
と、某ケOO軍曹の如く額に手を当てると義妹は大きなため息をつく。
「何よそれ。まるで合コンじゃない。帰ろうかしら……。」
「ま、待つであります!!玄白にも何か考えがあってのことだろうと思うであります!!なぁ、寒川氏、何か聞いてないでありますか?」
と、サブに助けを求めるが、彼も笑いながら、「聞いていない。」と言って先へと進んでいくだけだった。
その言葉に義妹は嫌そうな顔をして、「帰る……。」と駅を出ようとするのを俺は必死で止めると、義妹は渋々ついてくる。
そうした中、俺たちは電車で3駅ほど行った繁華街にたどり着く。
改札を抜けて、繁華街へ出ると、玄白は目的地であるカラオケ店を通り過ぎてどんどん先へと進んでいく。その後ろを追うように俺は玄白の後ろを追い、俺の後ろに美少女4人、そしてその後ろにモブとサブという具合で男が女子を挟み込むと言う形になる。
だが、その配置に少し違和感を覚えながらも玄白の跡を追うと、とある薄暗い路地裏に玄白は入っていく。
それを見て、俺はじわりと嫌な汗をかく。
玄白のことを信用して女子たちを連れてここまで来たが、玄白は何を考えているのだろう……。
女子たちも路地の雰囲気に圧倒されたのか、不安げな表情を隠せないでいた。
すると、玄白は立ち止まり誰かに向かって「来たぞ!!」と声をかける。
すると、路地裏先から、ゆっくりと先日の不良グループが現れる。
その様子を見て女子たちは後ずさろうとするが、サブとモブが邪魔で逃げることができない。
……計られた!?
俺は玄白の裏切りに動揺する。
入学以来友人として一緒に過ごしてきた友人が、まさかこんな裏切り行為をするなんて思っても見なかったからだ。
「玄白!!なんの冗談だよ、おい!!」
内心焦りながら玄白に声をかけると、「黙ってろ!!」と返事を返してくる。
玄白の迫力に押されそうになり、俺は女子たちの近くへと後ずさると、義妹とアイドル様が俺の両肩にしがみつき、幼馴染はギャルを守るような形で俺たちそ後ろに隠れる。
こんな状態でなければおそらくときめきの一つでも起こったであろうが、タイミングの悪い……と苦笑する。もちろん、冷静を取り繕うためだ。
この間の3人の不良+ボクシングチャンプにカンフーの使い手に腰巾着。
俺は数的不利な上に昨日は1人の足かせが今回は4人。守り切ることは不可能だ。
ただ一つだけ安心したことがあった。恐怖のあまりか、俺の説教が効いたのかはわからないが、幼馴染は俺の前に出ることはなかった。
「おい、お前らがこの前相手をしようとしたのはこいつらか?」
急に玄白が不良のリーダー格に俺たちの顔を確認させようと声をあげる。
その声に不良はいやらしい笑いを浮かべながら、ゆっくりとこちらに近づく。
そして、玄白の横を通り過ぎると俺の顔を見る。
「ああ、そうだな。俺をぼこりやがったのはこいつだ!!」
と言って不良は俺を睨んでくる。臨戦態勢を取ろうにも後ろに4人も女子がいるのだ、下手に離れられない……。
「おい、玄白!!裏切ったな!!」
「くくっ、俺の二つ名を思い出してみな……。」
と俺が声をあげると、玄白は不良のリーダーの後ろでニヤリと笑っていた。
……そう、彼は腰巾着だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます