第29話 女子達がうちで女子会を開くはずがない
翌週、私は沈んだ気持ちで学校に行った。
土曜日に川辺くんが女性といるところを見てからその姿が目に焼き付いて離れなかったし、その日の夜は食事も手につかなかった。
いや、もしかしたら私の早とちりかもしれない。けど、付き合っていたらどうしよう……。そんな思いが交互に顔を出す。
モヤモヤとした頭の中で教室に入った私はさっそく彼の姿を捉え、そしてため息をつく。
……見間違いだったらいいな。
何度も思い直すけど、真実は彼しか分からない。
彼が私の視線を感じてか、こちらを見たので、私は彼から顔を逸らすようにクラスを見渡す。
すると、クラスの空気が重い……。
海西さんは机に顔を伏せて沈んでいるし、美内さんは口をぱっかり開けて天を仰いでいる。
少し心配にはなったけど、私もそれどころではなかった。
再び川辺くんを見ると、彼も机に顔を伏せていた。そんな背中を見つめては、先日の光景が脳裏に浮かびため息を吐く。
その都度、彼はなぜかびくっと肩を揺らしていた。
「綾乃ん〜、どうしたの?なんか今日元気ないじゃん。」
私の心情を知ってか知らずか、出雲さんが呑気に声をかけて来た。
「あっ、理沙。ちょっとね……。」
私の煮え切らない返事に彼女は首を傾げる。
「ほんと、どうしたのよ。空ちも明日にゃんも元気ないし、綾乃んまでなんか不機嫌じゃん。この前は3人とも妙にテンション高かったくせにぃ〜。」
やはり彼女達も何かあったらしい……。
だけど、それより誰かに私の胸中を打ち明けたい。それで少しでも楽になるのなら、そんな心情的彼女に話を始める。
「いえ、ちょっと一昨日嫌なものを見てしまいまして……、それで落ち込んじゃいました。」
「どう言うこと?」
「……先日お話しした話のなんですけど。一昨日にその方を街中でお見かけしたんです。」
「へぇ〜、偶然だねぇ。けど、あっちはまだ気付いてないんでしょ?」
「はい、全然気づくそぶりがありません。」
彼女は私の話に相槌を打ちながら話を聞いてくれる。先日の女子会で話をしているおかげで彼女は理解が早い。話しておいてよかった……。
「それで、その人が一昨日何かしてたの?」
「うん、女の人と……。」
キーンコーンカーンコーン!!
事の核心を伝えようとした矢先に予鈴がなる。
すると前の方でごんという音が聞こえて来る。その音の方向を向くと川辺くんがなぜか頭をさすっている。
「綾乃ん、休憩終わったからまた後で話を聞かせて貰っていい?」
「そうですね、ちょっと相談したいこともありますので是非……。」
彼の様子を不思議に思いながらも、私たちは自分の席に戻り、授業を受けた。
そんな時でも彼のことが気になり、彼の背中を見つめた。
※
放課後、出雲さんは話の続きをするために私の席に来た。
川辺くんに関しては他のクラスメイト達と珍しく遊びにいくようだ。
普段なら直行直帰するらしいのに……。
「んで、綾乃ん。さっきの話の続きを教えてもらおうか!!」
川辺くんのここ数日の行動を網羅してしまった私は彼の背中を視線で追っていると、出雲さんが来て先程の話を聞きに来る。
出雲さんに話をしようとすると、美内さんもやって来た。
「えー、何?何の話?」
「綾乃んの恋の話〜。なんかあったみたいでよ〜。」
興味はあるんだろうけど、少し元気のない美内さんに出雲さんが説明すると、美内さんも目を潤ませる。
「えっ、それなら私の話も聞いてよ!?」
「えっ、いいけど?なら空ちも呼んで話しない?あの子も元気ないみたいだし……。」
「うん、いいよ!!」
「そうしましょう!!」
出雲さんの提案に私達は賛同し、海西さんの席へと移動すると、彼女は家に帰る準備をしていた。
「空ち、空ち!!今から暇!?」
「えっ、ええ。今から帰るだけだから暇だけど……。」
「じゃあ、今から私達と一緒にマック行かない?2人が相談したいことがあるんだって〜!!空ちも元気ないし、どう?」
「うん、いいけど……。」
出雲さんの提案に少し悩んだ海西さんは渋々と言った感じでOKを出す。
そして、私達は学校を出てマックのある方へ向かって歩いていく。
「あっ、ちょっと待って!!」
しばらく話しながら歩いていた私達を海西さんが引き止める。
「どしたの?」
「ちょっと家に荷物を置いて来ていい?」
美内さんが海西さんに何事かを尋ねると、海西さんはとある家を指差す。
そこには普通の一軒家があって、表札には海西と書いてあった。
「えっ、海西ちゃんの家ってここ?」
「うん。」
「ええ〜、いいなぁ。学校から徒歩圏内じゃん!!」
私と出雲さんがいうと、美内さんはにやりと笑顔を浮かべる。
「じゃあ、海西ちゃんの家で話そうよ!!外より落ち着くだろうし、いいでしょ?」
目を輝かせている美内さんに海西さんは「えっ?」と引きつった顔をする。
「賛成!!そこの自販機でジュース買って行こ!!」
出雲さんも美内さんの提案に乗り気で、いいでしょ?と詰めよられた海西ちゃんは勢いに負けて頷いてしまった。
「「やたー!!」」
と、足早に自販機でジュースを買いに行く2人を尻目に彼女は絶望した表情になっているので、私は心配になり「大丈夫?」と尋ねると彼女は苦笑いをしながらうなづいた。
そして、ジュースを買った私達はそれぞれの思いを話すために海西家に入っていく。
数時間後に修羅場を迎える事を私達は予想していなかった。
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