乱丁データ33

右手の人差し指が疲労骨折した。

基本的にボタンを押すだけの日々だから度々ある事だ。

私はこの手記で何度も本能や生理的欲求を話題にあげることで自分は人間だと思おうとしているが、数百億年間この地球基準で考えると特殊な空間にいるせいでそれも怪しくなってきている。

まず私は死なない。仮に今拳銃で頭を撃ち抜いたとしても死なない。

時相がズレてなかったことにされるか、寝ている間に勝手に復元レベルで治療されるからだ。

ただその時に盛大に嘔吐してしまうくらい気持ち悪いので、吐き損なだけだ。

死のうと決心すれば死ねるようだが、別に死にたいわけでもないので結局死ねない。

そして死なないということを体と脳が真に理解した時、その状況に最適化されていった。

具体的には恐怖という感覚が極限まで薄くなり、痛みを感じなくなった。

今も試しに折れた人差し指でタイプしているが、形状が違うせいでタイプミスを多発する以外は支障がない。

これが内臓の破裂や大きい骨の骨折だったとしても変わらない。

メインモニターを透過状態にしてから室内の光量を上げ、ガラスを鏡のようにして私を見てみる。

これはまだ人間なのだろうか。

それとも外部装置が存在する前提で脳がある種正常に機能しているだけなのだろうか。

何とでも言えるだろう。どちらの場合にせよ。

暇すぎるのだ。今はこの問題になり得なくなった問題について、悩んでみることにしよう。

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