乱丁データ32

言葉は完全な意思伝達手段である。不完全なのは未成熟のままだからだ。

そして活字とは不完全な意思伝達手段であり、完全な芸術である。

活字の世界は広大だ。地球にあったインターネットなどたかが知れている。

無の中から無限を取り出せるのは活字だけだからだ。

絵画も、音楽も、彫刻も、それぞれの良さはあっても、活字には及ばない。

それは意思伝達手段としては不完全であるからこそで、やはり地球にいた頃に流行った脳改造によるテレパシーは芸術たりえない。

分からないからいいのだ。全て伝わってしまえばそれは芸術ではない。

絵画ならただの書き置き、音楽ならボイスメッセージと何ら変わらなくなる。

しかし形が分からなければ、それは無限には届かない。ただの波だ。

無限の源泉は思考の中にこそあり、それを完全な不完全として、究極のバランスを持って取り出せるのは活字だけだ。


ところで私は今これをサブコンソールからこの船の記憶領域に書き込んでいる訳だが、印刷をせずとも活字と呼ぶのだろうか。

十分ほど考えたが結論が出なかったので、いっそ印刷することにした。これで解決だ。

せっかくなので後で製本することにしたが、革が必要だ。

普段あまり使わない素材なので今すぐに用意することが出来ない。

とりあえずは物置扱いしている、地球から持ってきた物資置き場に置いておこう。

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