乱丁データ29
今日は試しに、この手記を音声入力で書いている。
結果的に、口語で書くというのは、後で読みづらさを感じたりするのかもしれないが、手が空くのは便利だ。
おかげで、今も、ボタンを押せている。今はグラタンを、食べながら押している。
ボタンを押す、という、使命がある状況では、片手で食べられるメニューは、楽でいい。
うーん、、音声入力では息継ぎや一瞬の沈黙も、読点が入って、しまうのか。やはり手で書こう。音声入力には改良の余地が
ビックリした。
唐突にレッドシグナルがビープ音と共に表示された。何千回経験してもこれは慣れないな。
なんだか大昔にも同じことを言ったような気がする。まあ今慣れていないなら昔も慣れていないはずで、定期的に同じことは言っているのだろう。
レッドシグナルの表示は、いつもの死のタイミングをズラす装置を使う時期だというアナウンス。要するにもうすぐ寿命が終わるというアラームだ。
万が一にも忘れないように、この表示は処理が完了するまで消えることがない。モニタが使えないのはまことに不便だ。
面倒くささは感じるが、今はとりあえずビープ音だけは切って、グラタンを食べ終えたら処置を受けに行こう。
ん。区切って保存しないまま行っていたのか。
それなら続けて書こうと思う。
今、死のタイミングをズラす機械の処置を受けてきた。
DNAや塩基配列がどうとか、量子力学の見地から概念的唯物論に干渉するとか、とてもややこしいことをしているらしいが私にはさっぱり分からない。
特に興味のない分野だし、本気で勉強を始めたらボタンを押している暇なんてなくなるだろう。
おまけに星すら延命させる事ができる技術が既に動いているのに、私一人が研究などをしたところで意味があるとも思えない。
私はただ享受するだけだ。
この死のタイミングをズラす機械は不老不死の一つの完成系であると思うし、便利なんて言葉ではくくれない程のものだとも思うが、問題点が無い訳では無い。
色々とリセットされてしまう部分があるからだ。
前回は確か髪の毛が全て無くなった。その後普通に生えてはきたが。
その前は歯が全て抜けたあとに乳歯が生えるところからやり直した。
今回は珍しいパターンで、環境によって形成された生理的欲求の「慣れ」が消えてしまったらしい。
要するに空腹に強いとか、睡眠時間を多く取ってしまう習慣であるとか、そういうものが全てリセットされてしまった。
そういう訳で、数十億年一人だったことですっかり忘れ、忘却の彼方の遥か先の先にまで置いてきた性欲というものが、今復活してしまっているのだ。
はたしてどうしたものか。繰り返しになるがこの船には私一人だ。
性欲を楽しむことはもちろん、解消すること自体、方法が思い浮かばない。
もはや女性どころか人間を思い出すことすら難しい。
・・・正攻法で性欲を解消出来れば暇つぶしになるかと思ったが不可能なようだ。
仕方ない、勿体ない気もするが投薬で解決してこよう。
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