乱丁データ28

今日は暇潰しと食事のバリエーションを増やす為にドライフルーツを作った。

こういうことは栽培、収穫、乾燥まで全自動で済むのだが、久しぶりに手作業でやってみたかった。

この船の中で、私以外に唯一の生命である植物に触れてみたくなったからだ。

植物は食用、観賞用、二酸化炭素処理用など用途に関わらず触れることが出来るが、動物はバイオ化されて食用部位、つまり肉だけが増殖しているらしい。

安全性は保証されているが生理的に受け付けられないだろうという理由から隔離され、完全に全自動で管理されている。

その区画はバロメッツと名付けられ、私には開けられない(その気になれば開けられるのだろうが、敢えて開ける気もない)ドアの横にプレートがかかっている訳だが、何となく名前に皮肉を感じるものだ。

朧気な記憶では羊毛由来の伝説だったはずで、肉のためではない。

伝説を実態化させたら用途が変わっていたわけだ。

そうだ、明日はバロメッツの正体の収穫をしよう。

あまりボタンから離れるのは気分的にも良くはないが、人間らしい気まぐれで動くのも悪くは無い。

2万年ぶりくらいに裁縫をしてみるのもいいかもしれない。バロメッツ製のシャツでも作ろうか。

そして飽きたらまたボタンを押そう。

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