宇宙日記

乱丁データ27

この船ではたまにアナウンスが流れる。

内容は様々だが、伝えられたところで意味は無いものばかりだ。なにせ仮に問題が発生したとしても、それを解決する知識も技術も唯一の乗組員である私が持っていないのだから。

先程も酸素循環器のフィルターを交換するアナウンスが入った。

これも聞き慣れたものだが、ふとフィルターとはなんなのかと考えた。

定義するなら単純で、粒子などの大きさ、あるいは性質によって付着させて選別し、望むものだけを通過させるためのものだ。

だが概念的に何かを選別して通すということは、逆に何かを残すこと、こそぎ落とすものでもある。望む望まないに限らず。

だとするなら人間もフィルターと言えるのではないだろうか。

栄養素や水分を主に口などから摂取し、必要なものだけを取り込んで体外へ排出する。

いや人間と言うよりも生物全てがそうだ。

生き物は無意識に万物を選別しながら生きている。

きっと宇宙も何かを選別しながら生きている。

他の星や文明を知らないのでなんとも言えないところではあるが、私はきっと異物の最たるものだろう。

通されるものなのか、残されるものなのか、相対的にミクロな世界で生きる私には分からないが、どちらにしてもこのシミュレーションは完成させなければならない。

何を考えても結局はこの結論に至ってしまう。

何故なら、この宇宙の何が変わる訳でもないが、私という一個の精神はもう引くことは出来ないし、これ以外に救いもないからだ。