乱丁データ25

無意識とは怖いものだ。

今日は手が滑って、なんとなく、本当に理由もなしになんとなく開くことを避けていたフォルダーを開いた。

苦手意識や恐怖などなかったのだが、なぜ避けていたのだろうか。中身の分からないフォルダーなど、宇宙で数億年過ごす自分には垂涎の娯楽だろうに。

だが、今日その宝箱は開けられた。

宝箱には当然ながら宝が入っている。このフォルダーもそうだった。

それはシステムのログで、四億年前にこの宇宙船の一部が壊れ、パージしたというものだった。

まったく記憶にない。

まあ私はこの船の乗組員で、事実上の船長であり責任者だが、物理的にもデータ的にも触れる部分といえば極々限られた場所だけだ。

このログも私に危機が迫っている可能性があるという理由で公開されていたものなのだろう。

船の探索をしたこともあったが、あの時は確か・・・四十年・・・くらい迷子になった。百年は経っていなかったはずだ。恐らく。

それ以来あまり遠くへは行かないようにしている。

恐らく何かとてつもないもの、それこそ今の自分でも計り知れないような何かがあるのだろうが、暇つぶしの為に何十年、何百年もボタンから離れる訳にはいかない。

今この一押しでシミュレーションが完成するかもしれないのだから。

だから船の一部がパージされた事も知らなくて当然だ。

そもそもこの船の全体など把握できるわけもない。

だが、なぜ壊れたのか。壊れた部分には何があったのか。まだ宇宙を彷徨っているのか、それとも奇跡的にどこかの星に落ちたのか。

落ちたとしたら、そこには知的生命体はいるのか。

いい暇つぶしを見つけた。無意識に避けていたものが宝箱だったとは、本当に無意識とは恐ろしいものだ。

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