第45話 君と猫を抱いて
すぐに分かったことは、相川くんはあんまりマメじゃないということ。あれから三週間が経つが、僕は余裕でほとんどの連絡を無視されている。
でも病んだりめげたりしないのは、そもそも自分が重いとか迷惑とか思われる対象ですらないと分かっているからだ。相川くんにとって僕はよくて友達、悪くてなんとなく知り合ったホストくらいの認識なはずなので、うざいと思われたとしても、こちらの好意を察知して嫌われる可能性はないに等しいだろう。
それはそれで寂しいことではあるが、どんなに望んだところで僕は親友にしかなれないのだから仕方がない。いつかそうなれたら、それだけで充分だ。多くは望まない。
「あーもう、動いちゃだめだってえ」
……そんなことを思いながら、それでもやっぱり返事が欲しい!という純情な乙女(男子)心も邪魔をするわけで。いま、偶然家には死ぬほどかわいい子猫が二匹いるので、その写真を送って彼のリアクションをとろうという計画である。
子猫たちはじっとしていられず、ちょろちょろと動き回る。押さえつけたり無理やり抱っこしてまで撮るのは嫌なので、その動きに身を任せているが、そのせいでなかなかいい写真が撮れない。でもかわいすぎるから、許す。かれこれ2時間はこうして戯れている。
子猫二匹がいい感じに写っていて、かつ僕も盛れている写真なんていうのはなかなか撮れないものだ。やっとのことでいい写真が撮れたと思って見てみたら、膝に乗った猫の後頭部にへんな寝癖のようなものを発見して笑ってしまったせいで、僕だけちっとも盛れていなかった。
でもまあいいかあ。と思って、その写真を送ることにした。ぜんぜんかっこよくもかわいくも写っていないけど、猫二匹と僕のしあわせオーラが滲み出でいるような気がしたからこれでいいかと思ったのだ。
相川くんがこれを見て癒されますように。返事が来ますように。そう祈りながら猫を二匹とも膝に乗せたまま、アプリで画像を送信してみた。
まあ彼はマメじゃないし、また返事が来ないかもしれないけど、あんまり落ち込まないようにしよう。
と思った瞬間に返事が来たので、驚いて震える手でスマホを手に取った。
優也【待て、それはずるいだろ。かわいすぎる】
スバル【僕?】
嬉しさのあまり単刀直入に聞いてしまった。まったく僕はお茶目である。
優也【猫。】
わかってはいた。わかってはいた、が。
……相川くんの分からず屋!!!
頭にきたので、僕は既読無視をすることに決めて、スマホを閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます