第43話 君とオフの日に



今日は日曜日で、僕は仕事が休みだ。いつもと同じように夕方頃に起き出し、簡単な部屋の掃除をしたりなんとなくテレビを見たりして過ごしていた。



仕事がある日は他人と関わってばかりなので、休日は基本的にひとりきりでゆっくりと過ごすようにしている。にぎやかなのも嫌いじゃないけど、こういう時間もたまには必要だと思う。

そんな日常の間にも、あの日連絡先を交換できたのが嬉しくて、用もないのにアプリを開いたり閉じたりしてしまっていた。まだ連絡は一度もできていないのだけど。



お友達一覧の一番上に表示されている、「相川 優也」の名前。ベッドに横になってごろごろしながら、その文字を見ているだけで頬が緩む。



ひょっとしてこれは恋の始まりかなあ。まだ相川くんのことをそんなに知らないからハッキリ恋とは呼べないけど、なんかうきうきするんだよなあ。気になるなあ。会いたいなあ。いま、何してるのかなあ。



本格的に恋をしてしまったら、報われない片想いに辛くなるのは自分の方だ。わかっているのに、久々のこんな感覚に浮き足立ってしまう。



もっと話がしたい。声が聞きたい。そう思っていたら指先が無意識に、通話のボタンを押してしまっていた。



「あ、やばっ!」



ベッドの上で慌てて身を起こす。が、次の瞬間にはもう開き直っていた。



……まあいいか、男同士なんだし。どうせ意識もされてないんだし、電話くらいで引かれることもないだろ。だったらいいじゃん、押せ押せ僕!



心中の声に同意して衝動に身を任せているうち、勢い余って何回も電話をかけてしまっていた。僕は案外こういうおちゃめなところがあるのだ。しかし相川くんは一向に電話に出ない。四回目、ひょっとしてこのまま無視を貫かれるんじゃないかと心配になりはじめた頃、突然電話に出てくれたので逆に驚いた。



「おいおまえいま何時だと思ってんだよ」

「やっと出てくれた~!相川くん?久しぶり!」

「一週間しか経ってねーよ」

「今何してたの?僕とラーメン食べに行かない?」



なんの用意もしていなかったのにすらすらと口から出た言葉に、自分でもびっくりした。急な誘いに相川くんは、僕の好きなぶっきらぼうな話し方で、めんどくさそうに返してくる。



「おまえ俺のハナシ聞いてる?」

「今ねー相川くんの最寄駅にいるからさ!南口で待ってるねー」プツッ



己の強引さに感動すら覚えながら電話を切った。さすがホスト、よくもまあこんな嘘が矢継ぎ早で出てくるものだ。僕はいま、自分の部屋のベッドで横になっているというのに。



しかしこれはチャンスだ!



すぐさま立ち上がり、服を着替えた。相川くんが来る前に駅でスタンバイしておかなくてはならない。自分の勢いと勇気に感謝したい気持ちでいっぱいだった。

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