第18話 強引な君と

件の連絡に対し無視を貫いているうちに、いつの間にか土曜日になってしまっていた。例によって金曜日、0時過ぎまで会社に残っていた俺は帰宅後爆睡をかまし、起きたらもう土曜日の15時だったのだ。15時と言ったらもはや昼ですらないかもしれない。



まったく繁忙期をなんとか乗り越えたはずなのに、後輩のミスのしわ寄せでこんなことに……まあ、俺も通ってきた道だから仕方ないんだが。



大あくびをしながら寝返りを打った。

まだまだこのまま寝られそうだけど、ここで寝てしまうと今度は夜寝られなくなってしまうので、無理しても起きなければならない。



腹筋に力を込めてなんとか身体を起こす。テーブルの上に置きっぱなしになっていたペットボトルのふたを緩めて、眠気覚ましにぬるい水を一気に飲みくだした。



そこでふと思いついてスマホを掴み、着信画面を開いたりなんかしてみた。







『んんん~、優也?どしたの……?』



当然のように履歴のてっぺんに表示されていたスバルの名前を押したら、3コール目で出た。着信音で起きたのは明白だ、かなり眠そうな声をしている。こいつはこの時間いつも寝ているのだ。当然わかっていた。その上でかけた。嫌がらせというやつだ。



「別に?ちょっとお前の声が聞きたくなってさ。そんなことより」



日頃の仕返しとばかりに軽口なぞ叩いてみる。本当は明日のことについて問いただすのが目的だった。強引なスバルのことなので動物園を今更なしにできるとは思えないが、説得するだけしてみようと思ったのだ。



それなのに。



『へ………?ちょっ、あの、何言ってるの?……えっと、これ、夢かな……?』



……上擦った声で、こっちが恥ずかしくなるくらい照れてやがる。ぱあっと擬音がつきそうなくらい明るい声だ。



『でも!……あの、僕も、同じ気持ちだったからっ』



語尾が弾んでいる。なぜだ。俺はなぜ冗談でもあんなことを口走ったのだ。顔から火が出るくらい恥ずかしい。



「わ、わかったよっ、じゃあなっ」



思わず電話を切ってしまった。






なにをしている?

俺はバカの化身か?

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