第5話 猫を抱いた君と
あれから二週間で奴からの電話を二回無視した。そして三週目、二匹の猫と戯れているスバルの写真がいきなり送られてくる。
両方ともまだ子猫だ。一匹は膝に、もう一匹は腕に抱かれて、目を細め心地好さそうな顔をしている。
思わず光の速さで保存をし、目尻を下げてデレデレと見つめてしまった。何を隠そう俺は生粋の猫派なのだ。
猫を愛しすぎるあまり、つい沈黙を破って返事なぞ送ってしまう。
優也【待て、それはずるいだろ。かわいすぎる】
スバル【僕?】
優也【猫。】
そこからなぜか俺が既読無視をされて、さらに一週間が経とうとしている。いったいなんなんだよ、コイツは!
スバルは俺の苛立ちも知らずに、写真の中で猫を抱き、八重歯をちらりとのぞかせるあの人懐こい笑みを浮かべている。
◆
だからと言うわけでは決してない。決してないが、また哀子に誘われたので渋々、俺は飲みに出かけた。そしてお決まりのように、朝、デビルジャムに流れ着く。
「夕陽!あたしにシャンパンちょうだい」
「愛衣さん、いつもありがと~ね」
俺の隣では肩出しミニワンピース姿で今にもパンツが見えそうなくらい酔っ払った哀子と、そんなことを物ともせずてきぱきと相手をする夕陽くんがにぎやかに会話している。
今日はスバルが全然やって来ない。指名をしていないのだから、人気者のあいつがフリーで卓につくことなどそうそうないのだろう。分かってはいる。分かってはいるけど、なんだよあいつ。電話二回も掛けてきやがったくせして。
しばらく経った後、奥の席からスバルと女の子が店の外に出て行くのが見えた。見るつもりなどなかったけれど、視界の端に映ってしまったのだ。きっとお客さんを見送りに行くのだろう。
することもなく、俺は暗い店内でキラキラと光る高そうな照明をぼんやり見つめていた。
こんな朝方に、ホストクラブで、俺は本当に何をやっているんだ。
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