矢府さんとアサ
「俺の見立ては現役もしくは元警察官、そして被害者か被害者家族だと思うんや」
ボールペンの芯を仕舞ってからハラさんの方を見ると、顎に人差し指を当てながら語り続けていた。
「一発でやから銃の腕前は大会に出ていれば上位の人物、躊躇いもないから冷静な性格、年齢は3、40代ってとこか」
「さすが元捜査一課の敏腕刑事ですね、恐れ入ります」
深く頭を下げると、いやいやと照れたハラさんの声が聞こえて思わず口角を上げる。
ハラさん……
でもな、残念……最初以外検討違いやわ。
学生時代、クレー射撃の大会入賞常連やけど、暴れん坊、年齢は30歳にもなっとらんし。
「こんな俺でも捕まえられなかった犯人がこの前餌食になったらしい……当時部下やった:矢府(やぶ)もショックを受けててな」
顔を上げると、ハラさんは薄くなった頭を掻いていた。
矢府さんは捜査一課の班長。
ハラさんにお世話になったみたいで今でも会いにこの交番に顔を出す刑事。
口が軽いし、推理力がないからか、ハラさんに相談するように事件のことをベラベラしゃべんねん。
そんなやつの下で俺の同期のアサ……
アサは警察学校からの知り合いやけど、同い年やから今は兄弟みたい思っとる。
あいつは長男、俺は次男やから、あいつが兄か……それはイヤやな。
「でも、わしは感謝するわ……被害者も遺族もやっと救われたと思うたからな」
穏やかに微笑むハラさんにそうですかと静かに俺は言った。
ただ、静かに手の平に爪痕が付くくらい握ったのは俺しか知らない。
相変わらず、アホな警察官が多いんやな。
せやから、闇の執行人の仕事が終わらんのや。
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