第5話

「同棲って……」

「ああ、だってそれくらいしないと、お父さまが認めないもん。心配しなくても、お父さまたちも一緒だから二人っきりじゃないよ?」


 それはさらに心配ですけどね。

 そのお父さまは、聞くかぎりどう考えても恋人の存在を嬉しがっていない。

 そんな人と一日中――いや、夏休み中一緒というのはもはや拷問の類ではないだろうか。


 いや、それ以前に、いくら豪邸と言っても一軒家であろう、女子の家に泊まりに行く? 

 それも夏休み中?

 明らかに異常であるとしか思えない。

 この話、断ろうかな――。

 

 僕がそう考えていることすらも、見透かされていたのか。

 櫻小路さんが近寄ってきて、上目遣いでこちらを見上げた。


「だめ?」


 …………それは反則だ。

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