第4話

「それならそれで、西園寺君とか成瀬君とかでもいいんじゃないの?」


 僕はいわゆる陽キャたちの名を挙げる。

 彼らは僕より遥かにイケメンで、スポーツもでき、同性でも格好いいとは思うほどだ。

 個人的に好きかどうかはまた別の話だけれど。


 櫻小路さんは、「う〜ん」と唸りつつ、細い指先を顎の先に当てた。

 いちいち仕草も可愛らしい。

 わかってやっているのは明らかで、清楚という印象は少し修正したほうがいいかもしれない。


「私、彼らの告白を断ったことがあるから……。それに、彼らだと勘違いされそうだと思わない?」


 それは少し納得できる。

 が、それと同時に思う。僕は、勘違いされそうでもない、と。身の程をわきまえているっていう褒め言葉かな?


「その点君なら、無用な勘違いするタイプじゃないでしょ? 物分りもそんなに悪そうじゃないし」


 素晴らしく上から目線な評価だ。

 光栄な評価です、とでも答えようか?

 今まで――そこまで親しくなかったのが大きいんだろうけど――こんな彼女は見たことがない。

 メッキが剥がれている、というのか。

 これもわざとなのか。


「なんか、普段の印象と違う、みたいな顔をしてるね?」


 そんなに顔に出ているものだろうか。


「だって、夏休み中同棲するわけだから、ここで取り繕ってもしょうがないかな、って。どうせ君だしね」

 

 ちょっと待って。

 今凄いパワーワードが出た気がしたんだけど。

 同棲?

 政略結婚並みに高校生――少なくとも僕――には合わない言葉だ。

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