第21話 アセンション島 奇襲
1956年10月14日
アセンション島・北微西 472km海上に差し掛かった頃、謎の通信をセイニャールが傍受した。
「救・・とむ!・・・ら・・ィシュマナ陸軍、ア・・ション島防衛・・・隊だ!TS国が39時・・・に上陸を開・・・・!弾薬も不・・・してき・・・る為、長期戦は見込め・・・・・・・救援を求・・・」
途切れ途切れの無線が繰り返し流れた。
これを聞きつけた透華艦長は全速前進を指示した。
無線を傍受してから約4時間後。
辺りは橙色に染め上げられていた。
そして、目の前には赤く燃え上がるアセンション島が見えていた。
沿岸部には我が国の艦艇が上陸部隊の救助活動をしている姿と入れ違いで我が国の上陸部隊が投入されていた。
他にも我が国の旧式戦艦3隻がアセンション島南側に向けて砲弾を注いでいる姿が見える。
セイニャールで待機していたウォーソード隊の隊員らには出撃命令が下され、透華艦長からミッションを与えられた。
そのミッションとは…
「…アセンション島の奪還ですか?」
「アセンション島は戦略上最重要なので、奪還してもらいたいのです。」
「与えられたミッションは必ずこなして見せますが…何故最重要なのですか?」
久しぶりの戦闘で頭の回らないRは透華艦長に質問した。
「アセンション島はTS国に近い島の1つで、ここに我々の拠点を置けばすぐにでも攻撃が可能になるのです。そして同じようにマダガスカルも作戦上、最重要拠点になる場所なので絶対に奪われてはいけないのです。」
「なるほど…確かにアセンション島やマダガスカル島などが敵の手に渡るとこちらの勝利に揺らぎが発生しますねぇ…」
Rは理解を示すように頷きながらそう言った。
「ところで…アセンション島奪還をしてもらう上で1つ皆さんに聞きたいのですが…」
今度は艦長が質問をした。
「武装はどします?対地専用にしますか?」
Rは答えた。
「そうですね…私とAとZは空対空武装で、それ以外は多用途装備でお願いします。」
「分かりました。ではその様に整備員達に方向くしておきます。また、個々に武装指定があれば整備員に直接報告してください。」
「分かりました。ではお願いします!」
艦長は少し微笑んだ顔を見せた。
そして私たちに背中を向けて艦橋へと歩いていった。
艦長の指示はすぐに隊員たちに報告され、とてつもない速さで機体の装備交換が始められた。
15分後、ウォーソード隊の隊員は艦首部分から呼び出され、機体へ乗り込んだ。
全ての機体はオールグリーン状態であるのを確認した上で4機、同時発艦した。
先に発艦した部隊は多用途装備をしたFXS-01のウォーソード隊で、発艦後アフターバーナーを焚きながらアセンション島南側へと直行して行った。
残りの3機はR、A、Zの順番で発艦した。
彼らは発艦後、セイニャールの上空で待機命令が下され後にアセンション島南側へと向かった。
先行部隊は燃えるアセンション島をその目に焼き付けながら進み、敵を見つけた瞬間に攻撃を開始した。
さらに奥へと進むと敵の上陸部隊支援艦隊が大量に待機している姿が見え、近くにいる戦艦3隻に支援艦隊への攻撃を命じた。
先行部隊は奥から支援艦隊を1隻1隻確実に仕留めに行った。
支援艦隊への攻撃に気づいたTS海軍は徐々に対空火力を上げていき、遂にその周辺の空は明るく輝いていた。
しかし、敵の防空網をも機体性能だけでくぐり抜ける我が国の試作機は殲滅のペースを緩めることは無かった。
敵の上陸部隊支援艦隊も残り少しでと言う所で全機にアラームがなった。
コックピット内は赤く点滅し始め、次第に点滅速度が早くなっていった。
そしてセイニャールから無線が飛んできた。
「ウォーソード隊の多用途装備部隊の皆さんは直ちに着艦してください!レーダーにて敵機体7機を発見!恐らく例の中隊と思われます!」
例の中隊と聞いたウォーソード隊は混乱した。
"なぜこのタイミングで彼らが"
"敵もこちらの動きを予想していた…?"
"あまりにもタイミングが良すぎる!どうなってんだ!"
"何故こんな近い所で…"
無線は混乱していたが、多用途装備部隊らは急いで帰還し、武装の取り替えをし始めた。
アセンション島上空の航空戦力があまりにも少ないので、セイニャールから追加で別部隊の中隊を発艦させた。
発艦した部隊はルファ隊・ヒューザー隊・ブリアント隊・グーゴレ隊・テュール隊の計5中隊で、1中隊辺り12機で60機だ。
彼らは皆、本国で上位2%だけのBエースランクの隊員達で実力者揃いだ。
彼らはウォーソード隊の代わりに大地ミッションをこなしに向かった。
彼らがミッションをこなしている中、躊躇なく向かってくる例の中隊にウォーソード隊は少し恐怖を覚えた。
敵中隊は残り15kmの所まで迫って来ていた。
整備員達もさらにペースを上げて武装変更の作業を進めた。
敵中隊がセイニャールまで残り9km圏内に差し掛かった頃整備が完了し、直ちに彼らを発艦させた。
彼らを空へ上げた後、セイニャールが揺れた。
セイニャールの左舷側から黒煙が上がっている。
Rはセイニャールに無線を飛ばした
「何が起きたんだ!」
すると艦長から無線が飛んできた。
「南東微南から対艦ミサイルが飛来してきて…左舷側にダメージを受けました。前に受けた対艦ミサイルとは威力が段違いです!」
Rはその報告を受け、全機に告げた。
「この空に舞う鳥たちよ!全機に告ぐ。セイニャールを守護せよ!」
その場にいた全ての舞台がRの指示に従い、防空網を築き始めた。
空には2重の円環が構築され、いつでも交戦可能な状態となった。
残り3kmと言ったところで敵から無線が飛んできた。
"見せてもらおうか、亡霊"
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