第17話 事実 死んだ中隊
タリバリン中隊は6月19日に空に消えた。
それは敵も味方も周知の事実である。
だが、その後の76日間は他の誰でもない「タリバリン中隊員」しか知らない。
撃墜されたその日の夜、彼らは暗い世界に包まれた砂漠の真ん中で焚き火を囲むようにして横たわっていた。
各自、傷の治癒や晩飯の準備、撃墜された機体のレストア等を行っていた。
6月20日
朝起きてみると焚き火の周りには"牛肉"や"豚肉"が置かれていた。
誰も知らないと言い、とりあえず調理して食した。
撃墜された翌日に肉を食らい、いい思いをしている彼らのところに"
肉たちを乾いた空へ悠々と持ち去っていく大黒王鳥を見ていた彼らは自前の銃で犯人を撃ち落とした。
誰が置いていったのかも分からない肉塊だが彼らはそれを大事にした。
彼らは機体のレストアを中心に食料と水の確保を徹底した。
この生活を6月中続け、7月25日。
7機分の機体のレストアが終了し、タリバリン中隊だったころのロゴを剥がした。
これまでのロゴは7本の雲が一点に集まっているようなものだったが、新しく彼らでロゴを作った。
ロゴの外には"ウォーソード"と書かれ中心には剣を持つ人のシルエットが絵書かれていた。
ウォーソード。
彼らはタリバリン中隊という過去を捨て、新しくウォーソード中隊として活動をするつもりでいるのである。
しかし、彼らは分かっていた。
"この戦いが終わればこの中隊名を捨てなければならない"と。
ウォーソードという言葉には"戦殺しの剣"という意味が込められている。
彼らはこの戦争を終わらせることを再び誓ったのだ。
彼らにとってウォーソード隊は"戦を終わらす為だけに現れた謎の飛行中隊"という認識で良いのだ。
特別ではある。
が、同時にその中隊員が元タリバリン中隊員だと言うことを知られてはいけない。
タリバリン中隊は死んだ事になっているからだ。
タリバリン中隊員の死亡は国民全員が知っている"事実"だ。
知られてはいけないから特別なのだ。
名付けた翌日から彼らはアフリカの空を飛び回った。
出会った敵機を片っ端から撃墜していきながら北上をした。
敵としては本部に情報を送りたいだろうが、敵の識別情報には"100001-^?#"と映し出され送ったところでどこの国の機体なのかが分からないのである。
ウォーソード中隊はそうやって今まで生活をしてきたのだ。
これが死んだ彼らタリバリン中隊であり、生きたウォーソード中隊の物語である。
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