第2章

第15話 終わり それは始まりの合図

1956年9月


アラビア半島にそびえていた緑の山々は次第に紅く色付き始め春のような温かさのあるそよ風がこの国に少しの安心感を与えていた。


8月27日の事だった。敵国であるテイン・ストケル国、つまりTS国の侵攻がいきなり止まったのだ。


この事態に驚きを隠せなかった政府は次の対策案を考えていた。


翌日、TS国から電報が届いた。


「1957年1月25日から我らは再侵攻を行う。それまでに戦争の続行か降伏を考えておくように。」


猶予は3ヶ月程。タリバリン中隊を失ったRA国軍の士気は落ちていた。

このまま戦えば必ずRAはTS国の手に落ちるだろう。


上層部もこの事態の重さは理解していた。

誰もがこの国を手離したくないと

故郷を奪われたくないと


皆がそう考えていた。


この事はある山奥に建てられた大きく立派な御屋敷に住んでいるRAの首相である「だいこんおろし」にも当然耳に入っていた。


首相はすぐさま他のおろしシリーズを集めるように部下に命令し1956年9月10日、6人が集合した。


初めに話を切り出したのは首相だった。


「この状況は余りにも良くないと思いませんか?我がRA国のエースパイロット達が撃墜されてしまった事は非常に残念です。一度お会いしたかったのですが…」


首相は目を潤わせていた。

自分が首相である限り弱い場面は見せたくないという表れだ。


他の5人は静かに話を聞いていた。


しかし、無敵中隊と長い時間接してきたこんにゃくおろしは自分の教え子を失った事を思い出し泣いていた。


でも、こんにゃくおろしはしばらくした後泣きやみ、「すいません…」と言葉を発した。


首相は"いいんだよ…こんにゃく"といい慰めた。


そして話が進み始めた。


現在TS国は同盟国の一つであるエジプトの国境近くで侵攻を停止している状態で、RAへの直接的な干渉は無い。

しかし来年になればエジプトは陥落し直ぐに本国へと歩み寄って来るはずだ。


今この状況を利用しエジプト軍へ武器・弾薬の補給や、防衛陣地の強化をRAが後ろ盾しないと言う手は無い。


40分の話し合いでエジプト軍の援護をする事が決まった。


「と、とりあえずという感じですね…」

さつまいもおろしは思っていたことを吐き出した。

「それも仕方が無いですよ…タリバリン中隊がいなくてもある程度領土の解放を行うことは可能ですがTS国本土となるとやはりタリバリン中隊の力が必要になってきます。彼らが居なくなった今勢いで仕掛けることは無理です。」

じゃがいもおろしはそう言ったあとキッチンへ向かった。

「じゃがお姉ちゃん!私も手伝うよ!」

とまとおろしは直ぐ席を立ちじゃがいもおろしの元へ向かった。


「…タリバリン中隊が居なくなった今全ての作戦の成功確率は65%です。ねぇ、だいこん。訓練内容をもう少し厳しくした方がいいかな…」


「そうだね…こんにゃく。できる限りこちらからも資金提供はするから自由に軍を強化してくれて構わないわ」


「ありがとう、だいこん。感謝するわ!」


そう言い屋敷を立ち去った。


その直後屋敷に連絡が入った。


「もしもし、だいこんです。」


「戦線が!!」


「戦線?戦線がどうしたのです?」


「何者かがエジプトの西部戦線を押しています!」


「押している?どちらにですか?」


「TS国にです!謎の航空機が押し返しています!」


「機種は分かりますか?」


「えーと…あれはRA機です!」


「有り得ません!こちら側からエジプトへ飛ばすように命を出した事はありません!」


「ならあの7機は…」


「…え?」


だいこんに一瞬希望の光が刺した。


「本当に7機なのですか?!」


「え、えぇもちろん。」


「分かりました!情報提供、ありがとうございます!」


だいこんは直ぐに電話をきり、おろしシリーズ全員に連絡を飛ばした




"タリバリン中隊が生きている事が確認された"

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る