第11話 覚醒 ~予感~

2月1日の朝、朝食を済ませた3人は早速自機へと向かって行った。


機体の周りにはセイニャールの機体整備班がいた。

近づくと「おはようございます!ラニーニャ殿!」と良い声を発した。


奥にいた整備班の1人がこちらへ向かってきた。


「何か機体に問題でも?」


そう質問すると、即言葉を返した。


「いいえ、ラニーニャ殿のだけ他のお二人とは違う機体であったので…それにしても本当に良くできておりますなぁ~流石きゅうりおろし様様と言った所でしょうか。」


彼は私の機体に興味を示していたようだ。

確かにこの機体は昨日きゅうりおろしから直接貰った新型制空戦闘機「F-57UNKNOWN VALKYRIE(アンノウンヴァルキリー) 901-S」であり、ハイヤーとウェンズが搭乗している「F-16A2 AVENNES(アヴェンヌ)」とは全ての面において凌駕している。


彼がそう言うとラニーニャは言葉を返した。


「良かったらきゅうりおろしに会いに行くか?本土も本土でこの戦争のために動いてくれているから余程のことがない限り直ぐには無理だけどね。どうする?」


ラニーニャは彼にそう言ったのだ。


彼は喜び、脱帽し、全力で「是非、お願いします!!」と言った。


ラニーニャはその言葉を受け止め、約束を交わした。


「所で、君の名前はなんだ?」


「失礼しました!私は装甲空母セイニャール第3機体整備班整備長の佐藤瑛さとうあきらであります!」


「では佐藤さん、今回の任務が終了したらきゅうりおろしに直接言っておきます。約束します!」


「ラニーニャ殿…ありがとうございます!」



佐藤さんとゆっくりしていると無線の向こうから星音艦長の声が通った。


「ラニーニャさんウェンズさんハイヤーさんは出撃準備を進めてください。あまり緊急性を要するものではありませんが、ラニーニャさん達が向かうアフリカ大陸西部に数機ずつ敵機が向かっていく様子をレーダーで捉えました。詳しい居場所はおって話します。」


「こちらラニーニャ、了解です。」


3人は直ぐに出撃準備を始め、前方にある4基の蒸気カタパルトのうち3基を使用し、3機を並行に並べた。


機体のすぐ後ではブラスト・ディフレクターが展開され、いよいよ出撃と言うところまで来た。


しかしその時であった。


「3機とも、衝撃に備えて!」


艦長が声を荒らげて3人に伝えた瞬間、左舷側から大きな衝撃が走ってきた。


「い、今のはなんです?!」


「多分敵のトマホークだと思うわ…でも大丈夫。直撃した左舷側に問題は無いわ!発艦急ぐわよ!」


「了解!こちらラニーニャ機。電子機器・飛行系統に問題は見られない。良好だ。」


「こちらウェンズ機。こちらも問題なし。いつでもどうぞ。」


「ハイヤー機だ。問題無し。むしろ昨日よりも良い!」


「了解!ではラニーニャから順に発艦せよ。タリバリン中隊の3人、武運を祈る!」


星音艦長がそう言うと、ラニーニャから順に発艦し始めた。


3機は無事に夢空へ飛び立った。



飛び立って2時間後、ラニーニャ自信に変化が起きた。


「ラニーニャさん、機体が揺れてますよ。体調でも崩したんですか?」


「いや、大丈夫だ。」


「では、よそ見ですか?」


「まぁ、そんな所だ。」


「よそ見はダメですよ?」


「あぁ、すまんな。心配をかけて」


「しっかりしてくださいね!」


ウェンズがラニーニャを気遣った。

しかし、原因はよそ見ではなかった。


「(なんだったんだ今のは…急に頭が痛くなって。もしかして能力の覚醒のきざしか…?)」


ラニーニャは少し戸惑ったが、今は目の前のことに集中しようとほっぺを軽くはたいた。



「もうすぐセネガルだ。海岸がはっきりと見え始めたら3つに別れる。なるべく早く制空権を確保するぞ」


「「了解!」」


3人はそのままセネガルの海岸に向い飛んで行った。

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