第7話名の無い戦乙女
「どうして」と言いたげな顔を浮かべる矢嶋だが、今は目の前の敵に集中するしかない。
「ラニーニャさん!彼らは
「大丈夫だ、矢嶋さん!私が何とかするからさ!」
「援護しますよ、ラニーニャさん!」
「ラニーニャさん!俺もっすよ!」
「あぁ、お願いする!さぁ、かかれぇ!」
RA側が3機体制になった途端、連星の動きに乱れが生じた。
「くっ、やはり2人以上同時に相手することは無理か…」
「どうする?」
「牽制程度で良い。ミサイルを70%の確率でhitする様に調整しろ。」
「そんなもので良いのか?まぁ、お前の言う事には従うさ。」
「で、だ。牽制後直ちに後退だ。」
「了解。牽制開始。」
そう言った後、3人に向けて6発のミサイルが放たれた。
そう、命中率補整70% のミサイルだ。
通常のパイロットなら避けれるか避けれないかの狭間であるが、タリバリン中隊員にとっては「無誘導ミサイル」と同義だ。
3人はミサイルをするりと躱し、連星の方へと向きを合わせた。
しかし、その時には連星の姿はレーダーからも姿を消していた。
「クソッ!逃がしたか…まぁいい。2人とも1度本国へ戻るぞ」
「了解!」
無事に本国に戻った3人だが、矢嶋とグスコーニュの機体後部は穴だらけだった。
穴の周りはオレンジに変色し、何層もの特殊金属で作られたバイタルパートに数センチ凹みが出来ていた。
特に酷いのはエンジン部分だった。
エンジンを覆うように取り付けられていた遮熱板が、取り付け部分だけを残して溶けていた。
さらに、エンジン本体には無数の破片が刺さっており、中には数ミリズレていたら推力を失う所もあった。
被弾面を確認し終えた2人は早速きゅうりおろしの元へ駆け寄った。
「きゅうりおろしさん!ありがとうございました!」
「えっ、なになに?!どうしたの急に!と、とりあえず2人とも顔を上げて?」
突然の事で驚きを隠せないきゅうりおろしは顔を少し赤くしていた。
「と、とりあえず!何があったのか教えてちょうだい?」
そう言われて2人はきゅうりおろしに事情を話した。
「これは…酷いね…」
きゅうりおろしを格納庫まで案内し状態を見てもらったが、これには矢嶋もグスコーニュも同意見だった。
「2人とも、これを見て欲しいんだけど」
「これは、内部にある特殊装甲板っすね」
「そう。この特殊装甲板は全部で21層になっていてAAM-858型でも貫通しない代物なのよ。それなのにTS国と来たら、こんなあっさりと凹みをつけてくれちゃって。そもそもこの装甲板は凹みすらしないのよ。」
「凹まない…のか…」
「そう、これが凹んだということは相当な威力だったに違いない。」
「ものすごい衝撃が身体に染み渡りましたね…一瞬、機体制御が出来ないのかと思いましたよ」
ハハッと笑ってみせる矢嶋だったが、目は真っ直ぐ被弾面に向けていた。
「まぁ、いつかはこうなるとは思ってたよ。正直。でもこうなる事を見越してコイツよりよっぽどいい新機体を開発しておいたよ!」
「ま、マジっすか?!」
「あぁ、本当だ。着いてきて!」
きゅうりおろしについて行くとテスト機体をしまう専用格納庫に着いた。
「ここに?」
「そう、この戦争の戦局をより優位に働かせる様にできるはずだよ!」
扉がゆっくりと開いていく。
徐々に倉庫内に光がさし、全貌が見えてくる。
「そう、これが新機体の「F-57 UNKNOWN VALKYRIE901-S」だ!」
目の前に現れた黒と白の機体…
コックピット横につけられたカナードにV字型に取り付けられた尾翼…
機動力を高める前進翼…
どこかSU系に似たノーズはよりカッコよく見える。
「この名の由来は?」
「これは「名の無い戦乙女」と言う神話について書かれた書物の名前からとったの。」
「それを英語にした時に…なるほど。かっこいいですね。」
「明日でも良いから乗ってみる?私が許可出してあげるからさ!」
「いえ、明日もモロッコに向かわないと行けないので。」
「そっかー。なら仕方ないな!まぁ、ちゃんと身体は休めておく事だね!」
「ありがとうございます!」
2人はきゅうりおろしを後にした。
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