第3話 敵エースの正体
相手も大編隊の喪失で軍の再編成に時間を費やしているのかは分からないが、あの戦闘から1週間経った
それはそれでいい事ではあるが…
その時ハンヴェラ・ラニーニャ大尉は誰かの気配を感じ、その気配がいるかもしれない場所へと
場所は倉庫裏だった。
そして1人の男が背を向けて立って居た。
180cm程の身長に平均より少し細い身体。外見からしてあまり力が無さそうな男にすら見えるが…
「貴様何者だ!」
先に口を開いたのはラニーニャの方だった。
すると男はこう言った。
「俺はハンネス・ゼクトールだ。何者だと聞かれれば、そうだな。」
男は1拍おいてまた話し出した。
「簡単に言えばお前たちの"敵"だ」
ラニーニャは驚いた。
まさかこんな間近で敵に会うと思ってもいなかったからだ。
だがいつまでも驚いては居られない。
その驚きをラニーニャは力に変換し、ハンネスとの間合いを縮め、アッパーを放った。
「き、貴様ァ!何を使ったァ!」
まだ19歳の女性とは思えない声量でハンネスに言い放った。
何故なら彼女の放ったアッパーが当たる直前に避けたのだ。
ラニーニャが大声をだし、少し息を荒くしている時にハンネスは言った。
「
瞬歩に着いて軽く話したハンネスだが、続けて話す。
「瞬歩で間合いを一瞬で詰められるのなら敵の攻撃もバックステップ感覚で逆の瞬歩をしてやれば回避できるんじゃないかと、ラニーニャももう分かっているんじゃないか?」
そう、ラニーニャは「瞬歩」と言われた瞬間に全てを察したのだ。
そして察した瞬間、ラニーニャは少し微笑んだ。
「ハンネス…と言ったか?敵ながらあっぱれだ。しかしその瞬歩、誰に教わった?」
次の瞬間衝撃の答えが返ってきた。
「誰って…"こんにゃくおろし"しか居ないじゃないか」
ラニーニャは一瞬脳内が真っ白になった。
「だが貴様は敵だ!いつ教わったのだ!」
「石油大戦が起こる2ヶ月前だ。俺は自分からこの空軍を抜け、敵に寝返ったのだ。それだけだ。」
ハンネスがそう言うとラニーニャは静かにこう言った。
「…去れ」
ハンネスは分かりきった顔でその鋭い目を帰るべき場所へと視線を変えた。
ラニーニャは直ぐにこんにゃくおろしの自室へ向かった。
昔に起こったことを現役パイロット達に言うものでもないので知らないのも無理はない。
3回ドアをノックし相手の返事も待たずにドアを開けた。
「ラニーニャ、私の返事があってから入ってこいと何度言ったら分かるんだ?」
こんにゃくおろしは笑いながらそう言った。
しかしラニーニャの真剣な目を見たじゃがいもおろしは直ぐにその顔から笑顔を消した。
「どうしたんだラニーニャ。その顔だと何かを知った様だな。話してみろ」
数秒の沈黙の後、ラニーニャは話し始めた。
「さ…先程、ハンネス・ゼクトールと言う男に合いました。私が自室へ戻ろうとした時に気配を感じたんです。その気配の先の倉庫裏でアイツは居ました。」
ラニーニャがここまで言ったあとこんにゃくおろしは「いい、聞いた事全部話してみろ。遠慮するな」と言った。
そして言葉のままにその後の出来事をじゃがいもおろしに話した。
倉庫裏で会ったこと全てこんにゃくおろしに話した後、こんにゃくおろしは「なるほどね…」という雰囲気を醸し出しながら椅子の上で回転していた。
回転が止まったころ、こんにゃくおろしは話し出した。
「まぁ、アイツは敵のエースパイロットだろうな。実は最高ランク「ZZSエース」に昇格するだろうと思っていた候補の1人なのさ。当然そのエース候補という事は…もう分かるな?」
ラニーニャは1度頷いた後口を開けた。
「…貴方より強い、という事ですね?」
恐る恐るラニーニャは聞いてみた。
こんにゃくおろしは
「そうだ。その可能性は否定できない。しかしなラニーニャ。試験の時に1度言ったと思うが、あの立ち会いの時は実力の65%しか出てないと言ったはずだ。全力も出せば勝てないことは無い。」
「確かにそうですね。」
ラニーニャの返事を聞いたこんにゃくおろしは直ぐにこう言った。
「まぁ、今のラニーニャは私の全力でも勝てない実力を持ってるから大丈夫でしょ!」
まるで冗談を言うかのように軽くラニーニャに言った。
「失礼しました!」とラニーニャはじゃがいもおろしの自室を後にし、ラニーニャは自分の愛機に向かった。
そして愛機に話しかけた。
「なぁ、アヴェンヌ-7S。今回の戦争、撃墜されずに帰ってこれたら一緒に休暇を取ろうな。」
敵にあっても動じないその心は戦士の鏡ではある。
しかし感情がない訳では無い。
自分よりも強いかもしれない奴と出会ってしまえば心配になるのも無理はない。
エースの心は孤独なのだ。
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