第6話
どこにもいない・・・
マリンはどこだ?
まさか、正体は魚だったとか?
まさかね・・・
「お兄さん、どこ見てるの?」
マリンの声がする。
「マリン、どこだ?どこにいるの」
辺りをみる。
でも、いない。
「私は、お兄さんの目の前・・・下にも・・・ここら辺にいるじゃない」
マリンの声はするが、姿はない。
「お兄さん、わからない?」
「・・・うん・・・」
「私は今、お兄さんがいるところ・・・全部だよ」
ということは・・・
「そう・・・海。これが私の正体よ」
海?
海がマリンの姿?
どういう事だ?
「人間のマリンの姿は、お兄さんの希望が具現化したもの。
私は、見る人によって姿が、変わるわ」
「どういう・・・」
「お兄さんは、自殺しに来たんでしょ?私はそれを止めに来た」
止めに?
どういうことだ?
「海は、生命全ての母。あらゆる生物は私の子供。不本意に命を捨てるのを阻止するのは、母の義務であり、権利」
「権利?」
マリンのあの姿はもうない。
でも・・・
笑顔で頷いているように見えた。
「お兄さん・・・いえ、大和」
「何?」
「あらゆる生命は、いつか故郷である海に帰る。でも、あなたはまだ、その時ではない」
海は冷たい。
でも、言葉は温かい。
「大和は、まだやるべき事がある。それをなしとげるまでは、まだ故郷へ帰ってはいけない」
「・・・マリン・・・」
幻なのか、あのマリンの姿があった。
「今日、半日いて大和の事がわかった。大和はまだ、生きたいと願っている」
「マリン?」
「自信を持って。大和は自分で思っている以上に素敵な人。母が保証します」
海。
あらゆる生命の故郷。
いつかは帰る。
でも、まだその時ではない。
「大和、あなたが本当に人生に幕を下ろす時、私はまた会いに行く」
「・・・かあさん・・・」
ふと、言葉に出た。
「かあさんはよして、マリンでいいよ」
「マリン」
「じゃあ、またね」
そういうと、マリンの声は聞えなくなった。
それから、何年経っただろう。
僕は、がむしゃらに生きてきた。
結婚もし、子供も出来た。
子共も巣立ち、孫が出来た。
でも、マリンの事は忘れなかった。
そして・・・
僕は人生の幕を下ろそうとしている。
すっかりおじいさんになった。
「大和・・・」
「マリンか?」
「うん」
「あの時のまんまだね」
「このJKスタイルは、この時代には合ってないけどね」
マリンは。苦笑いをする。
「帰ろうか・・・故郷へ」
「うん・・・ところでマリン」
「何?」
「僕の人生は?」
≪大変良く出来ました≫
故郷 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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