第9話 

 あの一文を送り、原田をブロックしてから二週間が経った。


「佐々木さん、原田様からお電話です」


え、職場に電話かよ。何の用だろう。


「最近元気?」


「元気です」


「メール見てる?」


「みてないです」


「電話は? 気づいてる? 柚、どうして電話に出ないんだ」


「……」


「俺は柚のことが好きなんだ。忘れられないんだ」


「……」


「何か言ってくれよ」


「ごめんなさい。もうメールとか電話やめてほしいです。では、失礼します」


ガチャ。電話を切ってしまった。


原田はいつもと変わらず余裕な感じを出していたつもりだろう。


しかし、どこか焦りのある感じがした。

原田とはこれ以上話したくない。


取引がうまく行かなくなってもいいやと思った。最初からそうすれば良かった。


やっぱりこれは異常だもん。


普通、職場に電話ってするのかな?


この日を境に三日に一回電話がきた。


全て同じような内容。


ただただ怖かった。


私は勇気を出して、社長に相談した。


「実は……」


原田から、仕事とは関係のない電話やメールが来て、最近は職場にまで電話がくる事を話した。


ホテルや食事に行った事は、さすがに言えなかった。


「話してくれてありがとう。大変だったな。では、担当者を変えよう。担当者は、女性より男性がいいよね。この話は、ここだけの話にしておくから安心して。あと、電話はできるだけ出ないで。原田からの電話が来たら、俺に代わって。なんとかする」


こういう時、社長は頼りになるんだよな。話して良かった。


「なんか変わった事あったら、すぐ教えてな」


「ありがとうございます」


この職場には守ってくれる人がいる。私の上司が社長で良かった。



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る