第7話 

 最近、原田からの要求頻度が多い。会う頻度が2週間に1回になっている。どうにかならないものか。


圧力はかけてくるわ、仕事のことを出してくるわで、なかなか断れない日々を送っていた。


「断ったらさ、どうなるか分かるよね?」


「一回ホテル行ってるんだし、それを言いふらしてもいいんだよ」


という、脅しをしてくる。



 今日は原田に会う日。


しかし、その日わたしは待ち合わせに10分遅れてしまった。


「遅れてごめんなさい」


「……」


「怒ってますよね。ごめんなさい」


「おまえさぁ、俺に会う気あんの? 俺を待たせるとかありえねぇし。待たされたことなんて、1度もねぇんだよ」


原田さん。怒ってる。原田の顔を見ると、眉間にしわが寄っている。


私は、会いたい気は全くないんだけどね。


そのまま、怒って私との縁を切ってくれればいいのにとさえ思った。


「バレたらまずいんだから、マスクしろよ」


 原田の車からマスクを出し、私に渡した。


「バンッ!」


 原田は、物凄い勢いで、ドアを閉めた。絶対わざとやん。


かなり怒ってるな。


恐い。


この後、ご飯に行ったのだが、ずっと無言。


原田って怒るとこうなるんだ。怒鳴り散らす人苦手だな。


待ち合わせに十分遅れただけでこんなに怒る?


待たされた事ないとか、知らねえよ。自分勝手すぎ。


短気すぎるでしょ。


最初の原田さんのイメージは優しくて包容力あって、紳士で余裕のあるイメージだった。


それがどんどん壊れていった。そして、ついにこの日、完全に壊れた。仮面は完全に壊れたのだ。


やっぱり、ただの見せかけのイメージだった。


別れたら、どうなるかな。まず、確実に仕事には支障でるよな……


でももう付き合っていられない。


もう仮面男の言いなりにはならない。


私の中の殻がパリパリと割れる音がした。


もう絶対、原田には従わない。

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