第6話
「佐々木さん、今日は来てくれてありがとうございます。まさか、来てくれるとは思わなかった」
「ちょうど予定が空いていたので」
「お前が圧力をかけたからだろ」心の中で呟いた。
原田が車で迎えに来た。集合場所は、駅で、そこからは原田の車で移動だ。
ランチは料亭に行った。またしても予約制。そして、常連。
この人は、お金は有り余るほど持っていて、使いたい放題なんだな。
土曜日で料理屋さんはどこも混んでる様子で賑やかだったのに、ここはとても静か。
土曜日の昼とは、とても思えない。
住む世界が違うと思った。
ランチは、この間のことは何事もなかったように、普通の会話をした。
好きな映画は何とか、今これにはまってるとか。
普通に会話してたら紳士なんだよな。仮面男め。
「料理美味しかったね。ほんと来てくれてありがとうね。車で駅まで送って行くよ」
「ありがとうございます。お願いします」
しかし、着いたのはホテルの前。
「いい?」
いい?というか、もう駐車場に入ってるやん。断れないじゃん。
「柚ちゃんが付き合ってくれたら、取引はきっと成功するよ」
「え……」
「いいよね?」
なんだよそれ。脅し?パワハラ?しかも、ちゃん付けかよ。
地位が違うだけで、女性というだけでこんなにも理不尽な扱いを受けないといけないのか。
しかも、男の方が力が強くて逃げる事はできない。なんで神様は、こんな世界にしてしまったんだろう。
私は逃げる気力もなくなって、連れて行かれた。
大人の女性なんだから、嫌だったら断ればいいんだよという男たちがいる。
でもね、現実にはそんな簡単にはいかないんだよ。
誰もいない二人の空間で脅されたら、力が抜けて走って逃げるなんてことできなくなるし、逆らったらより酷い目に遭わされる気がして従ってしまうんだよ。
安っぽい作りの階段を上り、安っぽい部屋に入った。一時間我慢すれば終わるよ。そう自分に言い聞かせた。
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